60周年迎えるTEジャパンの2017年戦略を聞く:タイコ エレクトロニクス ジャパン 社長 上野康之氏(3/3 ページ)
電子部品大手のTE Connectivityの日本法人・タイコ エレクトロニクス ジャパン(以下、TEジャパン)の社長を務める上野康之氏に2017年の事業戦略を聞いた。
VR、センサーなどで攻勢へ
EETJ 民生、産業向けビジネスの強化策について教えてください。
上野氏 日本での売上高として考えると、民生をはじめとした市場は顧客の海外生産移管が進み、今後も大きな成長を見込むのは難しい。ただ、日本でのスペックイン数はさらに高め、全社売上高への貢献を進め、TEジャパンの存在価値を高める必要があると考えている。
そうした中で、日本の顧客が世界的な競争力を持っている産業機器分野をしっかりと伸ばしていく必要があると考えている。インダストリー4.0やIoTという流れに従い、つながる機能やセンシング機能を持ち合わせた新しい産業機器の開発が進んでいるという追い風がある。そこに対し、使い勝手の良いコネクター部品やセンサーの開発を強化し、センサー、コネクター、ケーブルアッセンブリーなどを組み合わせたトータルソリューションを提供していく。
他にも、(2016年10月に開催された展示会である)「CEATEC 2016」で、デモを展開したバーチャルリアリティー(VR)も大きな可能性のあるアプリケーションだと考えている。VRでは、大容量の映像伝送が求められると同時に、品質やデザイン性の要求も強くなり、TEとして競争力のある製品を提供しやすいアプリケーションだと言える。
EETJ センサーは積極的な買収などを仕掛けられ、ラインアップを強化されています。
上野氏 世界的に、センサー市場でのTEのシェアは高まり、ラインアップも整った。日本でもセンサーの提案活動を本格化してきている。ただ、センサーは、評価検証に時間を少し要するため、売り上げ面での貢献は少し先になるが、今のところ、提案活動自体は順調だ。
元々、TEが強かった位置検出センサーをコア製品として、新たにラインアップしているガス検知、湿度、圧力などのセンサーのスペックインが進んでいる。
要求厳しい領域に集中
EETJ 2016年には、ドイツの産業用コネクタメーカーIntercontec Group(インターコンテックグループ)を買収されました。
上野氏 過酷な環境に強い製品群を有しているメーカーであり、特に丸形メトリックコネクターに強く、期待している商材の1つだ。
EETJ 昨今の企業買収により、かなり製品ポートフォリオは拡大していますね。
上野氏 取り扱う製品種が拡大していることは確かではあるが、むやみに拡大しているわけではない。顧客要求の厳しい製品分野や、Intercontec製品のように厳しい環境に対応する製品分野など、TEが競争力を発揮できる技術課題を抱える領域に対しての製品ポートフォリオを拡大させている。これまでのように全てをそろえるというよりも、選択と集中を行っている。
実際、2016年には、回路保護部品事業をLittelfuseに売却した。回路保護部品事業自体、低迷していたわけではなく成長していたが、TEで事業を継続するよりも、(売却した方が)より大きな事業成長が見込めるとの判断で売却に至った。そうした売却益を注力する事業領域に対し、投資するとの方針だ。
60周年の節目、6〜7%成長に挑戦
EETJ TEジャパンとしての2017年の業績見通しをお聞かせください。
上野氏 今のところ、2017年はTEジャパンとして2016年比6〜7%増の売り上げ成長を計画している。自動車向けについては、2016年同様6〜7%の成長、そして回復基調にある産業向け、民生/通信向けについても6〜7%の増収を計画している。
決して簡単な数字ではないが、足元1〜3月は良いスタートが切れており、決して達成不可能な数字でもないと思っている。2017年は、TEジャパン設立60周年の節目を迎える年でもあり、ぜひ達成したい。
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