ISS 2017で語られた半導体技術の今後(後編):EUVから今後の半導体市場まで(3/3 ページ)
米国で開催された「Industry Strategy Symposium(ISS)」(2017年1月8〜11日)では、EUV(極端紫外線)の動向から半導体市場の今後まで、幅広く議論が行われた。
スマホ市場はミッドレンジとローエンドにシフト
Gartnerの予測によるとスマートフォン市場は今後も成長し続けるが、成長する機種がミッドレンジおよびローエンドにシフトしていくとみられている。スマートフォン向けチップの売上高が半導体の売上高全体に占める割合は2017年に25.4%でピークを迎える。金額ベースでは、2018年に977億米ドルに達し、過去最高になると予測されている。
2017年、PCとウルトラモバイルの成長は横ばいとなる見込みだ。同分野は半導体市場のセグメントとしては縮小し続けるとみられる。
GLOBALFOUNDRIESのPatton氏は、「半導体市場では、資金は自社株の買い入れとM&Aに投じられてきた。それが新たな市場へ参入するのに一番手っ取り早い方法だからだ」と述べた上で、Qualcommが自動車事業とIoT事業を拡大するため、膨大な資金を投じてNXP Semiconductorsを買収したことに言及した。
設備投資は縮小か
設備投資のセグメントには、引き続き最も強い圧力がかけられている。VLSI ResearchのプレジデントであるG. Dan Hutcheson氏は「設備投資は循環が滞った状態である。これは、サプライチェーンの安定性にとって大きな脅威といえる」と懸念を述べた。
イギリスのEU離脱やドナルド・トランプ氏の大統領選勝利に象徴される新たなポピュリズムの高まりは、マクロレベルにおいて最大の不確定要素である。
イギリスに次いで、イタリアも、難民問題などからEUを離脱する可能性が高まっているともいわれている。BCA ResearchのMatt Gertkin氏は、「これらかも、ブラック・スワン(予想外の経済的な事象)が起こるだろう」と述べる。
同氏は、トランプ大統領がインフラのプロジェクトや減税を進めるとなると、ばく大な赤字を出し、それが米国や中国でインフレを引き起こすとも予測している。その結果、「特に国外での設備投資を控える企業も出てくるだろう」とGertkin氏は予測している。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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