研究開発コミュニティーが置かれた危うい状況:研究開発のダークサイド(1)(2/2 ページ)
研究開発コミュニティーは「常に」危機に曝されてきた。研究開発に関わるエンジニアであれば、「研究不正」「偽論文誌・偽学会」「疑似科学」といった、研究開発コミュニティーを取り巻くダークサイドを知っておくにこしたことはない。本連載では、こうしたダークサイドを紹介するとともに、その背景にあるものを検討していく。
最近になって急速にクローズアップされてきたのは、「偽論文誌・偽学会」である。研究開発コミュニティーを食い物にする存在として、既存の学会では、しばしば注意喚起がなされている。偽論文誌問題が厄介な点は、「偽」であると決めつけることが困難であることだ。出版社は適正な学術論文誌を出版している(普通はオンライン掲載している)と主張し、「偽論文誌であるとの指摘は中傷だ」と反論することがほとんどである。
偽学会問題は別の点で厄介である。主催者は立派なWebサイトを立ち上げ、数多くの研究者に電子メールで告知および招待し、実際にカンファレンスを開催するからだ。参加者が、だまされたと気付いた、あるいは、だまされたのではないかと強く疑ったときには手遅れである。偽学会の多くはカンファレンスが閉幕すると、Webサイトを閉鎖してしまうからだ。
「メディア操作」は、いわゆる「メディアによる世論操作」ではない。逆に、科学的に無知なメディアを研究者が利用する。ここで「科学的に無知なメディア」とは、利用する研究者の側の認識であり、メディアが全て科学的に無知であることを意味しない。具体的には、テレビや新聞などの一般メディアの記者を集めて大々的に発表会を実施し、研究開発の成果を誇大に宣伝する行為を指す。発表会では先行事例を無視して成果の凄さを強調したり、成果の将来性を過大に見積もってみせる。
最後の「疑似科学(似非科学)」は、極端に言ってしまうと、詐欺商法、あるいは悪徳商法の温床である。「科学的に否定されている虚偽の効果」を科学的な装いで効果があるかのように言い立てる。古典的な疑似科学は「錬金術」と「永久機関」だろう。この2つがいずれも実現不可能なことは、理工系出身者の常識である。
しかし、科学技術がこれほど発達した現代においても、疑似科学による悪徳商法は後を絶たない。国内の医療・健康市場で、疑似科学と思われる商品が今でも一定の売り上げを維持している事実には、考えるべき要素が含まれている。
次回以降は、上記の主要なダークサイドについて順次、説明していくとともに、その背景に存在するものについてもある程度、検討していく。どうぞご期待されたい。
(次回に続く)
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