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スマホチップ大手の傾向で探る次期iPhoneのヒントMWC 2017(2/2 ページ)

「MWC 2017」で、スマートフォン向けアプリケーションプロセッサを手掛けるQualcommやSamsung Electronics、MediaTekといった主要サプライヤーの最新製品を見ていると、Appleの次期「iPhone」に搭載される可能性が高い技術が見えてくる。

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8コア、10コアを搭載したチップ

 Samsungも、10nm FinFETプロセスを適用したSoC「Exynos 9 Series 8895」を披露した。オクタコアを搭載した、ギガビット/秒クラスの通信速度を実現するLTEモデムで、5つの周波数帯を束ねる5波キャリアアグリゲーション(5CA)に対応するという。スループットは、5CAの場合、下りで1Gbps。2CAの場合は上りで150Mbps。


Samsungは「Exynos 9 Series 8895」で、ギガビット/秒クラスの通信速度を下りで実現した 出典:Samsung

 MediaTekはMWC 2017に合わせて、SoC「Helio X30」の出荷を開始したと発表した。Helio X30は10コアを搭載し、CPUを3つのクラスタに分けるトライクラスタのアーキテクチャを採用している。TSMCの10nmプロセスで製造する。Helio X30は、ARMの「Cortex-A73」(動作周波数は2.5GHz)を2コア、「Cortex-A53」(同2.2GHz)を4コア、「Cortex-A35」(同1.9GHz)を4コアで構成されている。MediaTekはLTEカテゴリー10のモデムを搭載している。

 市場調査会社であるLinley Groupのシニアアナリストを務めるMike Demler氏は、「MediaTekも10nmプロセスチップの市場に参入したことは大きい」と話している。

 3つの新しいチップに共通しているのは、10nmプロセス技術だ。QualcommとSamsungは、Samsungの10nm FinFET技術を適用し、MediaTekは、TSMCの10nmプロセス技術を採用している。

 IntelとSamsung、TSMCは、10nm SoCの完成や、AppleやQualcommなどのファウンドリー顧客の獲得をめぐり競い合ってきた。

 現時点では、Appleの次世代アプリケーションプロセッサ「A11」(仮称)に関しては、TSMCの10nmプロセスで製造されるのではないかと推測される。「独自のパッケージング技術『InFO(Integrated Fan Out)』を持つTSMCが優位に立っている」と指摘するアナリストもいる。InFOを適用することで、パッケージの薄さ、I/O速度、発熱量を改善できる。

 QualcommとSamsung、MediaTekが発表した新チップは、モデムの速度競争が激化していることを示している。


SamsungのExynos 9 Series 8895 出典:Samsung Electronics

 スマートフォン向けギガビットLTEは、間違いなく広く普及するだろう。

 通信速度では、Qualcommが、LTEカテゴリー18をサポートしたSnapdragon X20で下り速度で最大1.2Gbpsを実現しリードしている。Samsungは、LTEカテゴリー16と5CAで最大1Gbpsのスループットを達成して、わずかな差でQualcommを追う。

 MediaTekのHelio X30は、「Helio X25」に搭載されているLTEカテゴリー6対応モデムから、LTEカテゴリー10対応モデムにアップグレードしているが、QualcommとSamsungには及ばない。対するQualcommは既に、2016年に「Snapdragon 820」とカテゴリー12および13をサポートした「X12」LTEモデムを統合している。

 AppleのiPhone 8の新モデムチップに関しては、IntelとQualcommの両社がデザインウィン獲得をめぐる攻防を繰り広げている。

 Intelの新モデムチップ「XMM 7560」は、下り速度最大1Gbpsを超えるLTEカテゴリー16、上り速度最大225MbpsのLTEカテゴリー13のLTE Advanced Proをサポートしている。XMM 7560はIntelの第5世代LTEモデムで、14nmプロセスで製造した初のLTEモデムである。

 QualcommとIntelの両社のモデムは、5CA、4x4 MIMO、256 QAMなどをサポートしている。

 しかし、Snapdragon X20の発表によって、Qualcommが優位に立ったように思われる。

 MediaTekのMoynihan氏は、「半導体ベンダーがコア数やイメージセンサーの画素数といったメインの仕様を比べて、単純な競争をしていた時代は終わった。われわれは今、ベンダーが提供できるユーザー体験で競い合う段階に入っている」と述べる。

 MediaTekのHelio X30はこの目標に向けて、スマートフォン向けSoCでは最大となる10コアを搭載しているが、コア数だけが問題なのではない。Tirias ResearchのMcGregor氏は、「性能の向上と消費電力の削減の両方を実現するためにタスクを最適化することが重要だ」と指摘している。

ARとVR

 ARとVRは、スマートフォンにおける次世代の重要なアプリケーションだ。

 例えばSamsungは、ARMの最新GPU「Mali-G71」を採用し、3Dグラフィック性能の向上と、4KでのVRにおける遅延の低減をうたっている。

 面白いことに、MediaTekは、Helio X30においてARMのMaliからImagination Technologiesの「PowerVR」コアに移行した。Tirias Researchで主任アナリストを務めるKevin Krewell氏は、「Imaginationが新しい推進力を求めていることから、MediaTekと契約したのだろう」と推測している。

【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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