STT-MRAM採用のストレージアクセラレーター:Everspinが発表
MRAM(磁気メモリ)を手掛けるEverspin Technologiesが、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)を採用したストレージアクセラレーターを発表した。同社にとって初となる、システムレベルのMRAM製品だという。
STT-MRAMを採用したストレージアクセラレーター
MRAMチップメーカーであるEverspin Technologies(以下、Everspin)は2017年3月8日(米国時間)、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)を採用したストレージアクセラレーター「nvNITRO」の製品シリーズを発表した。
現在まだ発展途上である、STT(スピン注入磁化反転)技術をベースとした高密度MRAMデバイス市場を成長させるための取り組みの一環として、同社にとって初となるシステムレベルの製品シリーズを実現したという。
Everspinによれば、nvNITROシリーズは、読み書き速度が大幅に向上し、低遅延を実現するという。同社は、「まずは256MビットのDDR3 STT-MRAMをベースとし、容量1GBおよび2GBのnvNITROを用意する。2017年後半には、当社が近々発表する予定の1GビットDDR4 STT-MRAMをベースとし、容量が4GBから最大16GBまでの製品を提供する予定だ」と述べている。
Everspinでプロダクトマーケティング担当ディレクターを務めるJoe O'Hare氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「当社にとっては、従来と異なる方法で自社技術を市場に投入するという、全く新しい道を進んでいくことになる。だからといって、メモリチップの市場供給を止めるわけではない。今後も、メモリチップが当社の主要事業であることに変わりはない」と述べる。
Everspinは、商用MRAM製品を出荷している業界唯一のメーカーである。同社は、まだFreescale Semiconductorの一部門だった2006年当時に、MRAMの出荷を開始し、これまでに6000万個以上のMRAMデバイスを出荷してきたという。
しかし、同社がこれまでに出荷した製品の大半に適用されている第1世代のMRAM技術は、トグル方式のMRAM技術を採用しているため、16Mビット超の容量を実現することは難しい。
同社の第2および第3世代のMRAMは、スピン注入型であり、最近ではpMTJ(垂直磁気トンネル接合)素子を用いたSTT-MRAMも手掛けていて、2016年8月に製品を発表している。
MRAM技術の開発は、HDD業界で1990年代から使われてきた磁気技術と同じものをベースに、1990年代から始まった。DRAMやNAND型フラッシュメモリは、半導体業界において確固たる地位を確立したものの、業界全体が更なる微細化の実現へと向かう中で、非常に困難な課題に直面するようになった。そこでMRAMが、DRAMやNAND型フラッシュメモリを置き換え可能な次世代メモリ候補とされる、いくつかの新技術の中の1つとして浮上してきたのだ。
これまで長年にわたり、IBMやIntel、Samsung Electronicsなどの半導体最大手をはじめとする数々の企業が、程度の差はあれMRAM技術の開発に取り組んできた。現在では、Avalanche TechnologyやSpin Transfer Technologiesのように、pMTJ素子を採用したSTT-MRAMの開発を手掛けるスタートアップ企業もある。Spin Transfer Technologiesは2017年初頭に、製品のサンプル出荷を開始した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- STT-MRAMの基礎――情報の蓄積に磁気を使う
次世代不揮発メモリの候補の1つに、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)がある。データの読み書きが高速で、書き換え可能回数も多い。今回から始まるシリーズでは、STT-MRAMの基本動作やSTT-MRAが求められている理由を、「IEDM2015」の講演内容に沿って説明していこう。 - 東芝、メモリ新会社の過半株式を売却へ
東芝は、2017年3月期第3四半期業績に関する説明会見を開き、既に分社化することを公表しているメモリ事業新会社の過半の株式売却を検討していることを明らかにした。 - 東芝、3D NANDフラッシュの新製造棟を建設開始へ
東芝が、3次元(3D)NANDフラッシュメモリ「BiCS FLASH」の生産拡大に向け、四日市工場の新製造棟(第6製造棟)の起工式を行った。第1期の完成は2018年夏になる見込み。3D NANDフラッシュや新規メモリの開発を行う開発センターも、第6製造棟に隣接して建設される。 - 中国のメモリ市場、2017年はどう動くのか(前編)
半導体産業の拡大と強化に国をあげて注力する中国。その中国が現在、焦点を当てているのがメモリ分野だ。 - 4DS Memoryが40nmプロセス適用のReRAMを開発
オーストラリアの4DS Memoryが、40nmプロセスを適用したReRAMを開発した。モバイルクラウドの分野をターゲットとする。 - 産総研、電流ノイズからReRAMの挙動を解明
産業技術総合研究所(産総研)の馮ウェイ研究員らは、幅広い電流レンジでノイズを計測する手法を開発。この技術を用いて抵抗変化メモリ(ReRAM)が極めて小さい消費電力で動作する時の挙動を解明した。環境発電や人工知能デバイスなどに対する不揮発性メモリの用途拡大が期待される。