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理研ら、酸化亜鉛で異常ホール効果を観測:磁性と高速制御の両立を可能に(2/2 ページ)
理化学研究所(理研)らによる国際共同研究グループは、高品質な酸化亜鉛が磁性伝導電子を持っていることを発見した。低消費電力デバイス用の新たな材料として注目される。
電子移動速度は、磁性元素を混ぜた磁性半導体に比べて2〜3桁も速く
国際共同研究グループは、観測した異常ホール効果の磁場依存性と温度依存性について、理論的解析によって詳細に検討した。この結果、酸化亜鉛に含まれている少量の結晶欠陥が小さな磁場によって磁性を示し、伝導電子に影響を与えていることが明らかとなった。酸化亜鉛は電子間の反発が強く、磁石になりやすい性質がある。このため、少量の欠陥で十分に強い影響を受けたと分析している。
国際共同研究グループによると、酸化亜鉛中の電子の移動速度は、磁性元素を混ぜた磁性半導体に比べて2〜3桁も高い値を維持できるという。しかも亜鉛は安価で、酸化亜鉛は環境負荷の小さい物質である。現行のメモリ素子の一部を置き換える材料になり得ることから、今後も動作温度の向上やデバイス化に向けて開発を行っていく。
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