光通信網伝送性能を高精度に推定する技術を開発:スループット向上に役立つ
富士通研究所などは2017年3月21日、光ネットワークのスループット向上につながる新しい伝送性能推定技術を開発したと発表した。
ビット誤り率から高精度に予測
富士通研究所とFujitsu Laboratories of America(以下、FLA)は2017年3月21日、光ネットワークのスループット向上に向けた技術として、新しい光ネットワークの伝送性能推定技術を開発したと発表した。
光ネットワークは運用中に、ある地点間で追加の通信要求が発生した場合、その地点間の伝送性能を推定することで実現可能なスループットを算出し、その算出結果に基づいて新しい波長の信号を追加する。伝送性能の推定は、光ファイバーの損失や増幅器の雑音量などネットワークを構成する全ての物理パラメーターを正確に把握することが求められるが非常に困難なため、現状は、光ファイバーや通信機器の設計仕様値に基づいて伝送性能を推定していた。
ただ設計仕様値を基にした推定では、安定したネットワーク運用を担保するため実際の伝送性能より過小に見積もる必要が生じてしまう。その結果、本来であれば使えるはずのネットワークスループットに対して制限された状態で運用せざるを得ないという課題があった。
機械学習を利用
今回、富士通研究所などが開発した伝送性能推定技術は、従来の推定技術よりも高い精度で伝送性能を推定するもの。運用中の光ネットワークを構成する装置から得られる一般的な観測値であるビット誤り率を使い、ネットワークの特性を学習することで運用時の伝送性能を高精度に推定する技術を実現した。
具体的には、光ネットワークの物理特性を模した計算モデルから算出したビット誤り率と、運用中の光受信器から得られるビット誤り率を比較し、その誤差が小さくなるように計算モデルに対して機械学習を行う。そして、光ファイバーや増幅器の雑音量などそれぞれの物理パラメーターに対するビット誤り率の感度を分析し、その感度の大小に基づき自動的に適切なパラメーター更新量を算出し、ビット誤り率だけの情報から効率的な学習を実現した。
1波長当たりの信号スループットを最大50%改善
富士通研究所とFLAは開発した新たな推定技術の実証検証を、伝送距離約1000km相当の光ネットワークテストヘッドを用いて実施。その結果、テストヘッド性能と推定性能の誤差が15%以内であることを確認したという。さらに、検証結果を用いてネットワークシミュレーションを行い、「伝送経路によっては1波長当たりの信号スループットを最大50%改善し、光ネットワーク全体としてスループットを約20%改善できることを確認した」という。
今後、富士通研究所とFLAの両社は開発した技術の精度検証を進めると同時に、富士通の光伝送システム「FUJITSU Network 1FINITY」、広域ネットワーク仮想化ソリューション「FUJITSU Network Virtuora」に適用し2019年3月末までに実用化する方針としている。
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