自動運転向けセンサーフュージョンはローデータを使う:メンターのプラットフォーム(2/2 ページ)
現在、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転向けのセンサーフュージョンは、センサーから収集したデータをある程度エンドデバイスで処理している。Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)は、より高度な自動運転向けのセンサーフュージョンには、エンドデバイスで処理していない“ロー(Raw)データ”を使うべきだとし、それを実現するためのプラットフォーム「DRS360」を発表した。
極めて複雑なセンサーフュージョン
技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligenceの創業者であり、主席アドバイザーを務めるPhil Magney氏は、「センサーフュージョンは、非常に複雑なタスクである。さらに、ローデータを使う場合には、複雑さが一段と増すことになる。ローデータフュージョンは、アルゴリズムの統合において大きな課題が残るものの、コンピューティングリソースを、より効率的に中央システムに統合することが可能だ」と述べる。
Mentor GraphicsのPerry氏は、「ローデータフュージョンが難しいとされる理由は」とのEE Timesの質問に対し、以下のように答えている。
「理由は3つある。1つ目は、各センサーが、1秒当たりのフレーム数やサンプルレート、インターバルなどがそれぞれ異なるデータストリームを生成するという、非同期であることだ。2つ目は、さまざまな種類のデータをまとめて統合しなければならないという点である。カメラがオリジナルの画像を2D(2次元)で提供し、ライダーはポイントクラウドを3D(3次元)で提供する。これらのデータを3D環境マップ上で、時間と空間を整合させながら融合しなくてはならないのだ。3つ目は、集合的に統合しなければならない巨大なデータストリームであるという点だ」
Perry氏は、「かつての分散型センサーモジュールモデルでは、各センサーが大量のデータを破棄していた。しかし、集中型のアプローチを採用することで、フィルタリングされていないセンサーデータの精度と信頼性を確実に高めることができるようになる。Mentor Graphicsは過去2年間にわたり、こうした取り組みを進めてきた。ローデータセンサーフュージョンのアルゴリズムを開発したことにより、効率性の劇的な向上や、レイテンシの低減、スループットの向上などを実現でき、われわれ自身も非常に驚いている」と述べる。
Magney氏は、「業界は今後、ローデータセンサーフュージョンの方向に向かっていくだろう。他のさまざまな技術が進化することにより、ローデータフュージョンの発展も進むとみられる。例えば、ニューラルネットワークの性能は、複数のソースからローデータを収集することによって向上していくだろう」と述べる。
業界アナリストたちは、「Mentor GraphicsのDRS360は、相対的にオープン性に優れているという点が、大きな強みの1つになるだろう」と指摘している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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