多結晶Siトランジスタの性能と結晶性の関係を評価:電気特性劣化の要因特定が可能に
東芝は、薄膜多結晶シリコン(Si)トランジスタのチャネル(電流経路)部の性能と結晶性の関係を可視化する技術を開発した。その結果、個々の多結晶トランジスタの性能が結晶粒の平均的な大きさだけでなく、トランジスタのチャネル部を横断する結晶粒界の有無にも大きく依存することが明らかになった。
トランジスタの性能と結晶性の関係を可視化
東芝は2017日4月6日(米国時間)、米国モントレーで開催の国際信頼性物理シンポジウム「IRPS2017」にて、ナノサイズ薄膜多結晶シリコン(Si)トランジスタのチャネル(電流経路)部の性能と結晶性の関係を可視化する技術を発表した。同技術を活用することで、多結晶Siトランジスタの電流駆動力を劣化させる要因の特定が可能になる。
3次元構造の電子デバイスは、トランジスタに薄膜多結晶Siを用いている。だが、多結晶Siトランジスタでは、結晶性の不均一さが要因となり、電流駆動力が劣化する可能性がある。多結晶Siトランジスタの高性能化には、電子の伝導を担うチャネル部分の結晶性が特に重要である。そのため、3次元構造でナノサイズの微細な素子においてチャネル部分の結晶性を評価する手法が求められていた。
そこで東芝は、微細な電子デバイス中にある個々の多結晶Siトランジスタのチャネル部の性能と結晶性の関係を直接評価する手法を開発した。この手法ではまず、多結晶Siトランジスタのチャネル部分を切り出し、解析するための試料を作製する。次に、数nm以下の分解能を備えた電子顕微鏡を用い、試料に結晶の電子回折パターンを二次元撮影し、多結晶Siの同一結晶からなる領域を可視化する。
同社は今回の技術により、個々の多結晶Siトランジスタの性能が結晶粒の平均的な大きさだけでなく、チャネル部を横断する結晶粒界の有無にも大きく依存することを明らかにした。今後は、本技術を3次元構造の多結晶Siトランジスタの信頼性向上に活用していく。また、ピンポイントに不良部の位置を特定できるという本技術の特長を生かし、多結晶材料を含む各種デバイスなど広い分野への展開を目指すとしている。
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