RISC-Vベースチップ手掛ける新興企業が資金調達:米SiFive、850万米ドル獲得
RISC-VアーキテクチャをベースのCPUコアやカスタムSoCなどを手掛ける米国の新興企業SiFiveが合計1350万米ドルの資金を調達した。
カスタムシリコンへのアクセスを民主化すること
RISC-Vアーキテクチャをベースとした、カスタマイズ可能なSoCのプロバイダである新興企業SiFiveは、ベンチャーキャピタルであるSpark CapitalとOsage University Partners、Sutter Hill Venturesから、850万米ドルの追加投資を受けたと発表した。
SiFiveは、台頭するオープンソースハードウェア市場において、初期リーダーとしての役割を担っている。同社は今回のシリーズB投資ラウンドにおいて、合計1350万米ドルを獲得することになる。Sutter Hill Venturesは、過去にSiFiveに投資した実績を持つが、Spark CapitalとOsage University Partnersは今回が初めての投資だという。
SiFiveは2016年にRISC-V Foundationの取り組みに基づき、組み込みLinuxプロセッサコアをベースとするSoCと、マイクロコントローラコアを使用するSoCに向けた仕様を発表することで、業界への参入を果たした。さらにその後、同社にとって初となるRISC-VベースのSoCが動作可能なArduinoボードの販売を開始した他、オンラインで入手可能な半導体チップ向けのオープンソースRTLコードも開発している。
SiFiveは2017年5月初めに、新しい組み込みRISC-Vコアを発表し、数十万米ドルライセンス料を1回支払えば、Web上からそのプロセッサコアにアクセスすることができるという手法を提示している。
SiFiveは、RISC-V関連の投資家であるKrste Asanovic氏とYunsup Lee氏、Andrew Waterman氏の3人が設立した企業で“カスタムシリコンへのアクセスを民主化すること”を使命として掲げている。同社は、ソフトウェア開発ボード「HiFive1」の提供を開始してから6カ月の間に、世界40カ国以上の開発メーカーに1000個以上を販売したという。
Spark Capitalでゼネラルパートナーを務めるTodd Dagres氏は、報道向け発表資料の中で、「SiFiveが掲げる『新興企業や探索的なデザインチーム、堅実なクラウドファンディングキャンペーンを実施する投資家など、あらゆる人々の手元にカスタムチップを届ける』という目標は、Spark Capitalの基本的価値観に共鳴する」と述べている。Dagres氏は、今回の投資により、SiFiveの取締役会メンバーになる予定だという。
Microsemiなど複数のライセンス供与先
RISC-Vはソフトウェアやツールを提供可能な60社以上の企業から成るエコシステムを構築している。SiFiveは現在、CadenceやCortus、Imagination Technologies、Synopsys、Andes Technologyなどの企業が提供する、幅広い種類のコアとの間で競争を繰り広げている。Andes Technologyは2017年5月9日に、64ビットコアを発表したばかりだ。
現在のところ、SiFiveのライセンシーとして公に発表されている企業は、Microsemiだけである。しかし、SiFiveでプロダクト/ビジネスディベロップメント担当バイスプレジデントを務めるJack Kang氏は、最近行われたEE Timesのインタビューの中で、「当社には、複数のライセンス供与先がある。Microsemiは、IGLOO2やRTG4 FPGAプラットフォームなどのイメージングチップ、ビデオチップにおいて、RISC-Vを使用している」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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