シーメンス、メンター買収までの経緯を語る:「DAC 2017」で(2/2 ページ)
米テキサス州で開催された「Design Automation Conference(DAC 2017)」において、Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)の買収を2017年3月に完了したSiemens(シーメンス)が基調講演に登壇。Mentor買収に至る経緯と今後を語った。
買収のシナジーは
Grindstaff氏は、同日の午前中にプレスカンファレンスと基調講演を行い、統合に関して説得力のある見解を示した。同氏は、「当社の顧客は幅広い業界のシステムベンダーが大部分を占めるが、近年、製品に組み込むチップを自社設計するベンダーが増えている。こうした状況に対応するには、統合が必要だった」と述べた。
基調講演で、同氏は満席の会場に向けて、「IoT(モノのインターネット)で、インターネットに接続されるモノの数に関してはさまざまな予測があるが、現在も数多くのデバイスが接続されていて、その数はさらに増え続けていくという点に関しては意見が一致している。Siemensは統合によって、MentorがIC分野で確立した設計技術を獲得し、同技術をシステムレベルで展開するチャンスも得た」と述べた。
さらに、同氏は「当社の顧客の多くが関わっている分野における変化のスピードに対応できるようにしなくてはいけない。そのことも、Mentorを買収する原動力となった」と続けた。
Grindstaff氏の説明を踏まえると、Siemensは、「チップの設計」という分野に少しずつ近づいていくのではなく、その分野における豊富な知識と実績を持つ企業を買収することで、一気にそこに到達することを狙ったのだろう。
Siemensは、2017年3月に買収を完了し、IC設計の“資産”を手に入れた。一方でMentorは、これまで入り込めなかった市場に自社の製品を売り込むリソースを得た。Rhines氏によれば、Mentorの売上高の35〜40%は、プリント基板の設計から流量シミュレーション、熱伝導シミュレーションに至るまで、幅広くMentorのツールを利用するシステム企業から得ているという。
Rhines氏は「システム分野では、当社は既に約1500社の顧客を有している。潜在顧客の数はおそらく1万社に及ぶだろう。そのような潜在顧客に積極的にアプローチし、当社の製品を使ってもらいたい」と述べた。
MentorのR&Dにも積極的
さらにRhines氏は、Siemensの豊富なリソースと、長期的な成功に対する貪欲さによって、Mentorは研究開発(R&D)の重きが高いEDAビジネスにおいて、競合先に渡り合うことができるようになったと述べた。
EDA分野では、売り上げ高の30%超を研究開発に投じる企業も多い。その点では、近年のMentorは、CadenceやSynopsysに後れを取ってきた。Rhines氏が付け加えたところによると、Siemensは、Mentorがけん引する領域に対して、積極的に投資する意思を示しているという。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- シーメンスのメンター買収、EDA業界への影響は
2016年11月、Siemens(シーメンス)によるMentor Graphics(メンター・グラフィックス)の買収が発表され、業界に衝撃が走った。この買収は、実際のところ設計ツール業界、とりわけEDA業界にどのような影響を与えるのだろうか。Siemens PLM SoftwareとMentorのキーパーソンに直接、その疑問をぶつけてみた。 - 投資ファンドによるLattice買収に暗雲(前編)
2016年11月、米国に拠点を置く未公開株式投資ファンドCanyon Bridge Capital Partnersが、米国のFPGAメーカーLattice Semiconductor(ラティス・セミコンダクター)を13億米ドルで買収すると発表した。だがこれに、米国の規制当局が「待った」をかけている。 - Imaginationが身売りへ、Appleの取引停止宣告余波
AppleからGPUコアの技術利用停止の通達を受けたImagination Technologiesが、全社売却を決定した。Appleの通達を受けたとImaginationが発表してから、わずか2カ月後のことだ。 - ECがQualcommのNXP買収に懸念、本格調査に着手
EU(欧州連合)は2017年6月9日、QualcommによるNXPの買収に懸念があるとし、本格的な調査に着手した。2017年6月1日までにQualcomm側が懸念を払うための譲歩案を提示しなかったためで、買収に影響を及ぼす可能性がある。 - 東芝、寝台列車「瑞風」に小型駆動システム納入
東芝は2017年6月16日、JR西日本の新型寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)」向けに、小型ハイブリッド駆動システムを納入したと発表した。 - Intel、CPU+FPGAなど打ち出し自動運転攻略へ
Intel(インテル)は2017年6月22日、自動車分野に向けた取り組み状況に関するメディア向け説明会を開催した。