圧電振動子1024個、球面形状の超音波センサー:光超音波でリアルタイム3D画像
ジャパンプローブは内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として、1024個の超音波受信用の圧電振動子を球面形状に配置した超音波センサーを開発し、光超音波イメージング法によるリアルタイム3D画像の取得を可能にした。
直径110mmの半球に1024個の圧電振動子
ジャパンプローブ、科学技術振興機構、内閣府は2017年7月14日、ジャパンプローブの研究開発センター長である大平克己氏らの研究グループが、超音波受信用の圧電振動子を1024個備える球面形状の超音波センサーを開発したと発表した。同センサーの実現により、人体の血管網と血液状態(酸素飽和度)のリアルタイム3D画像を光超音波イメージング法で取得することが可能になったという。
今回の研究は、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として実施された。光超音波イメージング法とは、レーザー光を対象物の吸収体に照射し熱膨張させ、その際に発生する音波(光音響効果)を検出しイメージングする手法のこと。この手段で血管網や血液状態の画像を3Dでリアルタイムに取得するには3つの技術的な課題があったが、研究グループはそれら全ての課題を解決した超音波センサーを開発した。
1つ目の課題は、血管から発生する超音波を多方向から受信できるよう、超音波センサーの受信面を計測対象を取り囲むような球面形状とすること。2つ目は、球面形状に多数の圧電振動子を並べ、微弱な超音波を多くの圧電振動子で受信できるようにし、高解像度のリアルタイム画像を取得可能にすること。3つ目は、圧電振動子の受信可能な周波数を広帯域化し、観察対象の大きさに反比例して高周波化する超音波を検出できるようにすることだ。
ジャパンプローブの研究グループは今回、球面状に多数の素子を形成するために、モールド法を用いて薄い半球フィルム状の圧電振動子を作成。フィルム状の圧電振動子に複数の電極を配列する新開発の技術を駆使し、直径110mmの半球に1024個の圧電振動子を備えた超音波センサーモジュールを完成させた。圧電振動子にはコンポジット振動子を採用し、それを構成する圧電材料、整合層、ダンパー材を最適化することで、1M〜4MHz以上の広帯域な受信感度を実現したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ウェアラブルで物体検知、目の不自由な人向けに
目の不自由な人でも安全に外出できるように、小型のウェアラブル機器でユーザーの周辺検知を行う技術を開発するプロジェクトが、欧州で始まっている。ADAS(先進運転支援システム)で使われるようなセンサーフュージョンを、ウェアラブル機器に搭載するという取り組みだ。 - 構造物の欠陥を検知する新技術、超音波と光を活用
島津製作所は2016年10月5日、超音波と光を利用して、インフラ構造物における隠れた欠陥を非破壊で検出する新技術を開発したと発表した。実証実験を重ねて、3年後をめどに事業化を目指す。 - コウモリは飛行ルートを“先読み”する、超音波で
同志社大学研究開発推進機構の藤岡慧明氏らは、コウモリが目前の獲物のみならず、次の獲物の位置も超音波で先読みすることで、より多くの獲物を確実に捕らえる飛行ルートを選択していることを発見した。アクティブセンシングで検知した複数の標的を効率的に捕捉するための軌道計画や、自律移動を要する飛行ドローンなどのロボット技術分野へ応用が期待される。 - 東芝の水素センサー、高速検知と低電力を両立
東芝は、センサー膜にパラジウム系金属ガラスを用いた、独自のMEMS構造による「水素センサー」を開発した。高速検知と低消費電力を両立することに成功した。 - 人間の感覚を拡張するセンシング実現へ、団体発足
SoT(Sensornet of Things)をテーマとしたプロトタイプ製品の開発を目指す一般社団法人「スーパーセンシングフォーラム」が、活動を開始した。国内のセンサー関連企業やソフトウェア企業などを結び付け、競争力を生み出すセンサーとサービスの創造を目指す。 - モレックス、静電容量方式による液面センサー展示
日本モレックスは、「第7回 医療機器 開発・製造展」で、静電容量方式を用いた液面センサーを展示した。同社は、「コネクター単体での提供よりも、モジュールやケーブルなどを組み合わせたソリューションとして展開することが、より顧客にとっての価値になると考えている」と語る。