東芝の水素センサー、高速検知と低電力を両立:燃料電池車などを視野に
東芝は、センサー膜にパラジウム系金属ガラスを用いた、独自のMEMS構造による「水素センサー」を開発した。高速検知と低消費電力を両立することに成功した。
パラジウム系金属ガラスをセンサー膜に採用
東芝は2017年6月、センサー膜にパラジウム系金属ガラスを用いた、独自のMEMS構造による「水素センサー」を開発したと発表した。検知速度を落とさずに、消費電力を従来の約100分の1に低減することが可能となる。
地球温暖化防止などの観点から、水素社会の実現に向けた技術開発が進む。燃料電池車(FCV)や水素ステーションの実用化などもその1つで、今後の需要拡大が見込まれている分野である。一方で、可燃性ガスである水素を安全に使いこなすためには、使用状態を常時監視し、漏えいなど異常が発生すれば速やかに検知できるセンサー類が必要となる。ところが、これまでの水素センサーは、検知速度を向上するためにヒーターで加熱しなければならず、高速検知と低消費電力を両立することが難しかったという。
東芝は今回、センサー膜にパラジウム系金属ガラスを用いた独自のMEMS構造を開発した。これまで用いられてきたパラジウムは一般的に、水素と結合するため応答時間が遅く、放出のために加熱を必要としていた。今回は材料をアモルファス合金であるパラジウム系金属ガラスに換えた。これにより検知時間は数秒で済み、従来の高速検知が可能な水素センサーと同等レベルを実現した。
もう1つの特長は消費電力を低減したことである。従来の水素センサーは、動作時にヒーターで加熱する必要があり、消費電力は数十ミリワットから数ワットに達していた。これに対して、開発した水素センサーは常時加熱する必要がなく、消費電力を約100分の1かそれ以下の100μW程度に抑えることができるという。
開発した水素センサーは、半導体製造ラインで大量生産することができる。このため、製造コストの点でもメリットは大きいという。東芝は、FCVなどの市場が拡大するとみられている2020年以降の実用化に向けて、デバイス構造や製造プロセスのさらなる最適化に取り組む予定である。
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