802.11adは本格普及へ、Qualcommがデモ:16Gバイトのデータを数秒でDL
「SoftBank World 2017」(2017年7月20〜21日)で、Qualcommが、60GHz帯を使用する無線LAN規格IEEE 802.11adのデモを行った。同社は、「2017年は、802.11adの“普及元年”になるだろう」と述べる。
1.6Gバイトのファイルを数秒でダウンロード
Qualcomm(クアルコム)は、2017年7月20〜21日に開催したソフトバンクのプライベートイベント「SoftBank World 2017」(ザ・プリンス パークタワー東京)で、Wi-Fiの新しい規格「IEEE 802.11ad(以下、802.11ad)」で通信を行うデモを披露した。
802.11adは、60GHz帯を使用する規格だ。高い周波数帯を使用するので帯域幅も、1チャンネル当たり2.2GHzと広い。そのため、理論上は最大6.76Gビット/秒(Gbps)の高速通信を実現できる。
Qualcommは、802.11ad対応のAP(アクセスポイント)にストレージをSFP+ケーブルで接続し、そのストレージに保存されている4K動画を常にストリーミングしつつ、約1.6Gバイトの大容量ファイルをPCのハードドライブにダウンロードするというデモを披露した。4K動画のストリーミング中にもかかわらず、ファイルは数秒でダウンロードが完了。転送速度は約2Gbpsだった。APとPCの両方に、Qualcommの802.11ad対応の無線チップ「QCA9500」が搭載されている。
Qualcommがデモで使用したAPは、ネットギアジャパンが2017年6月に日本で発売したばかりの「Nighthawk X10 R9000」だ。Qualcommの説明担当者は、「802.11ad対応のAPがようやく日本で発売された。2017年内には802.11ad対応の無線チップを搭載したスマートフォンが市場に投入される予定だ」と説明する。
802.11adは既に2012年に規格策定が完了している。Qualcommも、802.11adのデモを過去数年間で何度か行っているが、説明担当者は「2017年こそ、802.11adが普及する“元年”となるのではないだろうか」と話す。「802.11adの普及は、当社の予測よりも1〜2年遅れているというのが正直な印象だ。市場に投入されるのはAPが先か、スマートフォンが先か、という問題があったが、まずはAPが出て、ようやくスマートフォンも登場する」(Qualcomm)
802.11ay対応チップも開発中
次世代無線LAN規格としては、2015年から標準化が始まったIEEE 802.11ay(以下、802.11ay)がある。こちらも60GHz帯というミリ波帯を使用し、最大100Gbpsの通信速度を実現しようとしている。Qualcommも、既に802.11ay対応のチップセットの開発に着手している。ただ、同社が目指しているのは、まずは10Gbpsの通信速度の実現だ。「チップセットで100Gbpsを実現しても、AP、つまり光回線の方がその通信速度に追い付いていない。そのため、当社のチップセットも、まずは10Gbpsを目指す」(Qualcomm)
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