群構造維持署名、高い安全性と相互接続性を両立:利用者数の増加にも容易に対応
NTTと情報通信研究機構(NICT)らの研究チームは、緊密安全性と相互接続性を兼ね備えた群構造維持デジタル署名方式(以下、群構造維持署名)を、世界で初めて開発した。
手軽に安全な暗号アプリケーションを作成可能に
NTTと情報通信研究機構(NICT)は2017年7月、ドイツのカールスルーエ工科大学との共同研究により、緊密安全性と相互接続性を兼ね備えた群構造維持デジタル署名方式(以下、群構造維持署名)を、世界で初めて開発したと発表した。
群構造維持暗号技術は、入力の持つ群の構造を維持しつつ、出力も群の構造を保つ。このため、複数の暗号要素技術を組み合わせて暗号アプリケーションを設計、構成する場合でも、高い安全性を確保しつつ、単純な接続が可能となる。
ところが、従来の群構造維持署名は、利用者数が増加すると、安全性を確保するために鍵長を伸ばす必要があり、これがコスト増加の要因などになっていた。これに対して、緊密安全性を持つ暗号技術は、利用者数が増加しても影響は受けないため、鍵長を伸ばす必要がない。しかし、複数の暗号要素技術を組み合わせて用いる場合に、1つでも緊密安全性でないものが含まれると、システムとして高い安全性を実現することが難しかった。また、緊密安全性を実現するために用いられているこれまでの手法は、群構造維持暗号技術に適用できないといわれてきた。
NTTなどが開発した今回の群構造維持署名は、相互接続性と緊密安全性を兼ね備えつつ、効率よく安全な暗号アプリケーションをモジュラー設計できる環境を実現するために開発した。
今回開発した技術の中でポイントの1つが、ビット列を群の要素にマッピングする方法を開発したことである。これまでのように単純な順序で集合を分割するのではなく、群の要素が一致するか否かを1ビットの情報にみたてて、新しい順序で集合を動的に分割することに成功した。これにより、群構造維持署名で初めて緊密安全性を実現することができたという。
研究チームは今後、開発した群構造維持署名方式を含めて、相互接続性と緊密安全性を持つ暗号要素技術(基本部品)を取りそろえつつ、安全なネットワークサービスに向けた暗号アプリケーション開発および実用化研究に取り組んでいく予定だ。
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