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FeRAMの長期信頼性に関する特徴:福田昭のストレージ通信(68) 強誘電体メモリの再発見(12)(2/2 ページ)
強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の長期信頼性を決めるのは、強誘電体キャパシターの分極特性だ。今回は、強誘電体キャパシターを劣化させる主な現象として「疲労(ファティーグ:fatigue)」と「インプリント(imprint)」について解説する。
ヒステリシス曲線が電圧方向にずれる「インプリント」
強誘電体キャパシターの劣化で良く知られているもう1つの現象が、「インプリント(imprint)」だ。「インプリント」が発生すると、ヒステリシス曲線は電圧方向に平行にずれていく。例えばマイナスの電圧方向(ヒステリシス曲線のグラフでは左方向)にヒステリシス曲線が移動していくとしよう。すると、ある程度まで進んだところで突然、負(マイナス)電荷の残留分極が大きく減少する。つまりそこで、データを保存できなくなり、データ保持期間の制限要因となる。ただし、正(プラス)電荷の残留分極量は初期値とほとんど変わらない。非対称である。
インプリントは、書き込んだデータ(分極の向き)をそのままにしておくと、経時変化によって発生するといわれている。この結果、データ保持特性を悪化させる。
強誘電体キャパシターでインプリントが発生する様子。ここではヒステリシス曲線がマイナスの電圧方向(左方向)にだんだんとずれている。この結果、負(マイナス)の電荷を有する残留分極が急激に減少してしまう。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)
(次回に続く)
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