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MIPSコアは中国の手に渡るのかImaginationの売却で(2/2 ページ)

Imagination Technologiesが、同社の売却について、2つの投資ファンドと合意したと発表した。このうち1つは、中国資本の米Canyon Bridge Capital Partnersである。中国メーカーは長年にわたり、MIPSアーキテクチャを使用してきたが、今回の買収によってついに中国がMIPSを手に入れるのだろうか。

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誰がMIPSを狙っているのか

 ImaginationのGPU IPとグラフィックス関連の専門技術はともかくとして、半導体業界では今後も、最終的に誰がMIPS IPの資産を手に入れることになるのかをめぐり、引き続き論争が巻き起こっていくとみられる。

 MIPS Technologiesが2012年に売却を決定した当時、シグナルプロセッシングIPのライセンス供与企業であるCevaが、MIPS IPの取得に意欲を示し、9000万米ドルの買収価格を提示した。MIPSは最初、その申し出に合意したが、Imaginationが1億米ドルを提示して対抗買収を仕掛け、Cevaを打ち負かす結果となった。

 今回も、ImaginationがMIPS IPを売却するに当たり、Cevaがこれを取得するのではないかとみられていた。

 2012年当時、MIPS Technologiesの売却先候補には、Synopsysの名前も挙がっていた。Synopsysは2010年に、ARC Internationalを買収しているため、現在は組み込みRISCプロセッサ「ARC」シリーズを提供している。しかし、もしSynopsysがMIPS IPを取得すれば、同社のプロセッサのポートフォリオを拡充することが可能になる。

 Imaginationが2017年5月初めに、MIPSの売却を検討していた時、米国の市場調査会社であるTirias Researchで主席アナリストを務めるKevin Krewell氏は、EE Timesのインタビューに対し、「MISPは現在も、拡張性を備え、ソフトウェアエコシステムを確立した、標準的なCPU設計である」と述べている。同氏はこの時、CadenceやMentor Graphics、Synopsysなどが買収に意欲を見せるのではないかと推測していた。

 Krewell氏は「Microchip Technologyのような主要顧客がMIPSのライセンスを買収する可能性もある。また、多数の中国ベンダーがMIPSアーキテクチャを使用していることから、中国企業がMIPSのライセンスを買収することも考えられる。Krewell氏の見解では「MIPSにとっての市場機会は、縮小したとはいえまだ確実に存在する」と述べた。

 Tallwood以外で、どの企業が実際にMIPS IPの獲得競争に参加しているのかは明らかになっていない。また、Imaginationがどのように売却先をTallwoodに決定したのかも不明だ。

著名なエグゼクティブを抱える両ファンド

 Canyon BridgeとTallwoodにはいずれも、米国の半導体業界でキャリアを積んだ著名なエグゼクティブがいる。

 Canyon Bridgeを設立したのは、中国生まれで米国の市民権を持つBenjamin Chow氏である。Chow氏は20年以上にわたり、プライベーエクイティファンドやベンチャーキャピタルの上級幹部として実績を積んできた他、技術の研究開発に携わった経験もある。そのため、中国とシリコンバレーの両方に強力なコネクションを持っている。

 Chow氏は2016年夏、国営の投資会社であるChina Reform Managementから資金を提供される形でCanyon Bridgeを設立した。China Reform ManagementはCanyon Bridgeの唯一の投資元となっている。


Ray Bingham氏

 Canyon Bridgeのもう1人の著名な人物として、半導体業界で長年実績を積んだエグゼクティブであるRay Bingham氏がいる。Bingham氏はCypress SemiconductorとFlextronics(現Flex)でチェアマンを務めていた人物だ。

 Reuters(ロイター通信)の報道によると、Chow氏は2016年8月にBingham氏に接触したという。米国を拠点とする買収ファンドに、Bingham氏のような米国人のパートナーを取り込めば、Canyon Bridgeへの関与を積極的に望む中国系の人物と組むよりも、対米外国投資委員会(CFIUS)による監視が少なくなると見込んだようだ。

 Bingham氏の技術業界における高い評価は、Canyon BridgeがLatticeを獲得するのに役立ったといえるが、同氏の存在は、Canyon BridgeによるLattice買収に対するCFIUSの監視をそらすには及ばなかったようだ。

 Canyon Bridgeへの関与は、Bingham氏にとっても高くついた。Bingham氏は2017年6月、Cypressの取締役を辞任した。そのころCypressは、同社の創業者で長年にわたりCEOを務めたT.J. Rodgers氏との厄介な委任状争奪戦のさなかにあった。


Dado Banatao氏

 1982年にCypressを設立したRodgers氏は、Canyon BridgeがLatticeの買収プロセスを進めていた2017年初め、Binghams氏のCanyon Bridge Partnerへの関与は利益相反に当たるとして、古巣であるCypressを提訴した。Cypressは以前、Latticeの買収を検討していた。

 一方、TallwoodのゼネラルパートナーのLuis Arzubi氏はIBM出身で、同社のマイクロエレクトロニクス部門に20年以上在籍していた。Tallwoodに入社する前まで、同部門のバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めており、IBMの半導体事業部門を全て統括していた。

 Tallwoodのマネージングパートナーで設立者のDado Banatao氏は、明確なビジョンを持った人物としてシリコンバレーではよく知られた存在である。Banatao氏は旧National SemiconductorやIntersilにも勤務した経験がある。

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