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ベンチャー企業の“典型的な失敗”に学ぶ、成功への要素イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜(20)(2/3 ページ)

今回は、これまで取り上げた北米のベンチャー企業のケーススタディーを振り返りつつ、ベンチャー企業の成功はどんな要素に左右されるのか、ということを考えてみたい。

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ベンチャー企業がぶつかる壁

(1)技術が良くてもコスト的に見合わない

 環境エネルギーを手掛けるベンチャー企業のほとんどがこれに相当する。


画像はイメージです

 筆者は、AZCAを主宰する一方で、ベンチャーキャピタルNoventiにおいてベンチャーへの投資も積極的に行ってきたのだが、Noventiが投資した、あるスタートアップもそうだった。米国カリフォルニア大学バークレー校において藻類の研究をしていた企業なのだが、その藻類をバイオディーゼルに適用しようとしていた。メキシコで実験を行い、量産に向けてオーストラリアに広大な土地も確保したのだが、折しも原油価格が下落し、それと同時期に低コストのシェールガスも盛んになってきて、コスト的に競争力を生み出すことが難しかった。Noventiが声をかけたインドの会社なども同社に投資し、合計すれば100億円以上が投入されたと記憶している。そのスタートアップは、バイオディーゼルから戦略を変更し、より付加価値の高いオメガ3(サバやエゴマにも含まれる油の一種)を抽出して販売する戦略に切り替えた。だがそれも難しく、うまくはいかなかった。

(2)良い技術だが、製品化には膨大な資金と長い期間が必要で資金が続かない


Ballard Power Systemsの燃料電池 出典:Ballard Power Systems

 こちらも(1)と似ていて、環境エネルギー関連のベンチャーに多い。そもそも環境関連の技術というのは足が長いもので、本連載の「“技術の芽吹き”には相当の時間と覚悟が必要だ」で紹介した、カナダのBallard Power Systemsもその典型的な例だろう。このケースでは、燃料電池は膨大な時間と資金をかけて商品化はしたものの、コスト的に見合う製品に改良していく過程でBallardと荏原製作所が設立した合弁会社の資金が続かなかった。

(3)技術が良くても量産化でつまずく

 こちらは、「厚き量産の壁、リソースの不足で花が開かなかった技術」で紹介したiFire Technologyが相当するだろう。イノベーションはあるが、量産までたどり着けないのである。iFireのケースでは、数十枚の良いディスプレイが作れても、それと同じ品質で何十万枚も量産できるメドが立たなかった。これはスタートアップに限らず、大手企業にもたくさんの例があるはずだ。それほど、量産というのはハードルが高いということなのだろう。

(4)良い製品でも業界標準にならず、売り上げが伸びない

 ある技術にとって、業界の標準(デファクト・スタンダードでもよい)になれるかどうかは、非常に重要な鍵を握っている。「“技術以外”で勝負どころを見極める、デファクト・スタンダードの重要性」で紹介したAlien Technology(エイリアンテクノロジー)は、RFIDにおいて、業界の標準化がなかなか進まないことにしびれを切らし、自ら進んで、自社の技術がデファクト・スタンダードになるよう戦略を立てた。結果的にこれは成功している。逆にいえば、業界標準にならない、もしくは業界標準に対応できない技術は、市場の主流となるには非常に厳しいものがある。

(5)良いアイデアでも製品化が遅れ、市場機会を逃してしまう

 こちらは、光ディスク技術を開発していたCalimetricsの例が相当するだろう。本連載では「主流になり得た技術、わずかな開発の遅れが命取りに」で紹介した。同社の技術は、技術の資質はよかったものの、やはり難しく、予想以上に開発が遅れた。これは(4)とも関係してくるのだが、開発が遅れ四苦八苦している間に、光ディスクの標準規格になれる機会を逃してしまったのである。

(6)良い製品を出したが、急速にコモディティ化(陳腐化)し、コスト競争で負ける

 これはTVやHDDがそうだろう。「価格競争は早めに手放す、付加価値の追求を急げ」で紹介した通り、HDD技術は、高密度化が進む一方で価格も急速に下がり、コモディティ化もあっという間に進んで価格競争に移ってしまった。そのため、HDD業界は利幅の少なさに苦しんできた。TVの分野では、日本メーカーが軒並み、韓国や中国のメーカーにやられてしまった。かなり古い話にはなるが、電卓などもそうだろう。

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