マルチホップ無線搭載、低電力センサーシステム:色素増感太陽電池で動作
フジクラは、「Embedded Technology 2017(ET 2017)/IoT Technology 2017」で、マルチホップ通信のエネルギーハーベスト化を実現したセンサーシステムのデモ展示を行った。
照度600ルクス以上では色素増感太陽電池のみで動作
フジクラは、組み込み技術とIoT(モノのインターネット)技術の総合展「Embedded Technology 2017(ET 2017)/IoT Technology 2017」(2017年11月15〜17日、パシフィコ横浜)において、色素増感太陽電池を用いたエネルギーハーベスト型環境センサーシステムのデモ展示を行った。センサーノードとセンサーステーション間のデータ伝送には920MHz帯マルチホップ無線通信を用いている。
同社は、直射日光が得られない室内などの低照度環境においても、高い効率で発電することができる色素増感太陽電池を製品化。この製品に自己消費が少ない電源マネジメント回路を組み合わせた、IoT機器向け電源モジュールも開発している。この電源モジュールはシステムの消費電力が大きい場合、蓄電デバイスと組み合わせたハイブリッド電源構成にすることも可能である。
ハイブリッド電源ユニットを用いてセンサーノードを駆動させ、5分間隔でデータ収集を行った場合、照度400ルクスの環境でセンサーノードは約7年間動作する。照度が600ルクスを超える環境だと色素増感太陽電池の発電のみで動作できる。このため、内蔵した1次電池を交換する必要がない。色素増感太陽電池が発電しない環境でも、搭載したリチウムイオンキャパシターで、約1週間はセンサーノードを動作させることが可能だという。
開発したセンサーノードの測定項目は温度(測定範囲は−10〜60.0℃)、湿度(同20〜95%RH)、照度(10〜10万ルクス)、気圧(同300.0〜1200.0hPa)、人感(室内用のみ、検出距離は最大5m)である。外部センサーを接続するための拡張端子も用意している。
開発したセンサーシステムは、親機となるセンサーステーションと、子機や中継器の役割を果たすセンサーノード(屋内用/屋外用)からなる。無線部には920MHz帯の特定小電力無線を用い、同期の精度が高いマルチホップ機能を実装した。この結果、消費電力の少ない多段中継を実現し、最大5段の中継転送によりカバーエリアも従来に比べて拡大できるという。再送や迂回(うかい)など経路の自動構築機能も搭載した。
センサーステーションからはイーサネットやWi-Fi、3Gおよび4G移動通信システムなどを介して、上位コンピュータ側に収集したデータを伝送することができる。
なお、920MHz帯マルチホップ無線エネルギーハーベスト型センサーシステムは、主催者の組込みシステム技術協会(JASA)が選ぶ「ET/IoT Technologyアワード」で、IoT Technology優秀賞を受賞した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ET2017、IoTの課題を解消する技術に焦点
組込みシステム技術協会は2017年9月6日、組み込み総合技術展「Embedded Technology 2017」(略称:ET2017)の開催概要を発表した。 - 実用化目前! 電池レスの無線キーボード
富士通セミコンダクターは展示会「Embedded Technology 2017(ET2017)/IoT Technology 2017」(会期:2017年11月15〜17日)で、電池を搭載しない無線キーボードのデモを公開している。 - 農業の6次産業化を支える土壌センサー
ラピスセミコンダクタは2017年11月14日、土の中の環境をセンシングする土壌センサーユニットを製品化したと発表した。土の中にセンサーを直接埋め込み、土壌のpH(水素イオン濃度指数)や肥沃(ひよく)度、温度、含水率が測定できる。 - IoT時代で勝つには“組み込み視点”の議論が必要だ
EE Times Japanでは、組込みシステム技術協会(JASA)とスキルマネージメント協会(SMA)が推進する「IoT技術高度化委員会」とコラボレーションし、連載「JASA発IoT通信」をお届けしていく。連載第1回目は、同委員会で主査を務める竹田彰彦氏のインタビューを紹介する。 - プリンタ技術から生まれた太陽電池と蓄電素子
リコーは、「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2017」(2017年10月4〜6日、幕張メッセ)で、同社のプリンタ技術を活用して開発を行っている有機太陽電池と蓄電素子を展示した。 - 豊富なコンデンサー群でIoTを支える、日本ケミコン
日本ケミコンは2017年10月3〜6日に開催される「CEATEC JAPAN 2017」(千葉・幕張メッセ)で、「あらゆるシーンでIoT(モノのインターネット)を支える信頼のブランド」というテーマの下、主力製品のアルミ電解コンデンサーや、自動車向けに採用が伸びている導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーなどを展示する。