量子コンピュータ、クラウド上で体験可能に:一般ユーザーに無償公開
国立情報学研究所らの研究グループが、量子ニューラルネットワーク(QNN)をクラウド上で体験できるシステムを構築、一般ユーザーに公開する。
量子ニューラルネットワークによる計算を、クラウド上で体験できる
国立情報学研究所は2017年11月20日、同研究所とNTT、東京大学の研究グループが、光の量子的な性質を用いた新しい計算機「量子ニューラルネットワーク(QNN)」をクラウド上で体験できるシステムを開発し、同年11月27日より公開すると発表した。
量子ニューラルネットワークは、光パラメトリック発振器(OPO:Optical Parametric Oscillator)という新型レーザーの量子力学的特性を用いて、最適化問題を計算する。
長い光ファイバリング中に配置された光増幅器をオン、オフすることで、数千個に及ぶOPOパルスを生成する。この多数のOPOパルス間に、解きたい問題に対応する相互作用を入れると、パルスが光ファイバリングの中を何度も周回しながら、全体として最も安定する位相の組み合わせを取るようになる。これが、最適化問題の答えとなる。
今回、これまで大規模な光学実験装置だった量子ニューラルネットワークを大幅に小型化することに成功。データセンターなどに設置できる筐体に納めた、小型の量子ニューラルネットワーク計算装置(以下、QNN計算装置)を開発した。加えて、光学システムの温度安定性を向上し、共振器位相のフィードバック制御を改良することで、1週間以上、安定して大規模な最適化計算が行えるようになったという。
さらに、開発した小型のQNN計算装置を、一般のユーザーに体験してもらうため、「QNNクラウドシステム」を構築して公開する。
このシステムは、公開用Webサーバと、計算タスク制御サーバで構成されている。認証を受けたユーザーは、公開用Webサーバが提供するWebページから、QNNでの計算をリクエストする。計算タスク制御サーバは、公開用WebサーバとQNN計算装置の間で行われる、計算リクエストや計算結果レスポンスのやりとりを制御する。なお、QNN計算装置は、NTT物性科学基礎研究所(神奈川県厚木市)に設置されている。
QNNクラウドシステムの公開により、専門的な技術が必要な光学実験装置の調整をすることなく、QNN計算装置を体験できるようになる。今回の公開では、Max-Cut問題(最大カット問題)について、最大2000要素からなる量子ニューラルネットワークにおいて、全ての要素間に結合があるような難しいケースを、QNN計算装置で解くことができる。
なお、今回のプロジェクトは、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発プログラムの一環で、NTT物性科学基礎研究所 量子光制御研究グループの武居弘樹上席特別研究員、本庄利守主任研究員らのグループ、国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系の河原林健一教授、加古敏特任准教授らのグループおよび東京大学 生産技術研究所 合原一幸教授、神山恭平特任助教らのグループが、携わっている。
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