ISSCC技術講演の初日午後ハイライト(その2)、超高速無線LANや測距イメージセンサーなど:福田昭のデバイス通信(127) 2月開催予定のISSCC 2018をプレビュー(3)(2/2 ページ)
「ISSCC 2018」技術講演の初日(2018年2月12日)。午後のハイライトとして、ミリ波無線、イメージセンサー、超高速有線通信をテーマにした注目論文を紹介する。ミリ波無線では「IEEE 802.11ad」に準拠した送受信回路チップが登場。イメージセンサーでは、ソニーやパナソニックが研究成果を披露する。有線通信では、PAM-4によって100Gビット/秒の通信速度を実現できる回路が発表される。
TOF方式の距離測定用100万画素イメージセンサー
セッション5の「イメージセンサー」は、10件と同じ時間帯のセッションでは最も数多くの発表を予定する。
Microsoftは、TOF(Time of Flight)方式の距離測定用100万画素赤外線CMOSイメージセンサーを発表する(講演番号5.8)。画素寸法は3.5μm角。変調周波数は最大320MHzである。シャッタはグローバルシャッタ方式。光照射は裏面照射型。製造技術はTSMCの65nm CMOS、1層多結晶Si、8層金属配線である。
ソニーグループは、Cu-Cu接合のフリップチップ技術によって画素と14ビットのアナログデジタル変換器を一体化したCMOSイメージセンサーを報告する(講演番号5.1)。画素数は146万画素。画素寸法は6.9μm角。グローバルシャッタ方式、裏面照射型である。
パナソニックグループは、光導電フィルムを用いた8K4K解像度で60フレーム/秒のCMOSイメージセンサーを発表する(講演番号5.2)。グローバルシャッタ方式とローリングシャッタ方式を切り替えられる。画素内に雑音抑制機能を内蔵した。
PAM-4を駆使して100Gビット/秒を突破した有線通信送信回路
セッション6の「超高速有線通信」では、4値パルス振幅変調(PAM-4:Pulse Amplitude Modulation-4)を駆使して伝送速度を100Gビット/秒(bps)以上に向上させた超高速送信回路の開発成果が続出する。
Intelは、56Gシンボル/秒の3タップFFE(Feed Forward Equalizer)をベースに送信モードを変更可能な有線送信回路を開発した(講演番号6.1)。データ転送速度はPAM-4符号モードのときに112Gbps、NRZ符号モードのときに56Gbpsである。PAM-4モードで112Gbpsの伝送を実行したときのビット当たり消費エネルギーは2.07pJ。10nmのFinFET CMOS技術で製造した。回路のシリコン面積は0.0302mm2である。
IBM Researchなどの共同研究グループも、PAM-4符号モードのときに112Gbpsと高いデータ転送速度を実現した送信回路を発表する(講演番号6.2)。8タップのデジタルFIR(Finite Impulse Response)フィルターを備える56Gシンボル/秒の8ビットSST(Source-Series Terminated)デジタルアナログ変換器を基本回路とする。112Gbpsの信号伝送を実施したときのビット当たり消費エネルギーは2.6pJ。14nmのバルクFinFET CMOS技術で製造した。シリコン面積は0.095mm2である。
Xilinxは、データ転送速度が19Gbps〜56Gbpsと可変の有線通信用トランシーバーを開発した(講演番号6.4)。変調方式にPAM-4を採用している。マルチステージCTLE(Continuous Time Linear Equalizer)の受信回路、3ビット〜7ビットと分解能可変のアナログデジタル変換器、14タップFFE、1タップDFE(Decision Feedback Equalizer)、ボーレートベースのCDR(Clock Data Recovery)などを集積。16nmのFinFET技術で製造した。
(次回に続く)
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