テラヘルツ光源を開発、円偏光電磁波を放射:車両の自動運転などにも対応
京都大学らの研究グループは、高温超電導体を用いた超電導テラヘルツ光源を作製し、円偏光特性を持つテラヘルツ波の放射に成功した。市販の単3形電池をつなぐだけで円偏光テラヘルツ波を放出できるという。
市販の単3形電池をつなぐだけ
京都大学のアセム・エルアラビ工学研究科博士課程学生と掛谷一弘准教授、筑波大学の辻本学助教らによる研究グループは2018年1月、高温超電導体を用いた超電導テラヘルツ光源を作製し、円偏光特性を持つテラヘルツ波の放射に成功したと発表した。車両の自動運転などにも応用できる技術だという。
テラヘルツ波は周波数が1THz前後の電磁波である。高速無線通信や空港におけるセキュリティ検査、ガン部位の識別、封筒内の薬物検知、宇宙観測などで用いられている。特に円偏光テラヘルツ波は、極めて密度が高い移動体通信の他、被測定物にダメージを与えないため、医薬品の識別や組織の診断などの用途で注目されている。しかし、単独で円偏光テラヘルツ波を連続発振できるデバイスはこれまで開発されていなかった。
研究グループは今回、正方形の対角を切り取った形状の超電導テラヘルツ光源を作製した。結晶構造を基盤としたシンプルなもので、耐久性や量産性に優れているという。動作温度の上限は80K(−190℃)であり、市販の冷凍機で対応することが可能である。
作製した超電導テラヘルツ光源で発生させたテラヘルツ波は、最大99.7%の円偏光度を持つことが測定結果から分かった。測定された発振周波数の0.4THzは、円偏光放射が予定される値と一致しているという。電界の回転方向も、産業技術研究所のグループが発表している理論計算との比較から提案した。
今回開発した技術の特長の1つは、市販の単3形乾電池1本をつなぐだけで、円偏光のテラヘルツ波を放出できることだという。従来の円偏光通信システムのような、大掛かりな仕組みを用意する必要はない。
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