PET基板上にセンサーなど電子部品をはんだ付け:マイクロ波加熱で短時間溶融
産業技術総合研究所(産総研)は、低耐熱性のプラスチック基板上に、センサー素子などの電子部品をはんだ付けすることができる、短時間はんだ溶融技術を開発した。
布や伸縮性ある素材にIoTデバイスを実装
産業技術総合研究所(産総研)フレキシブルエレクトロニクス研究センターハイブリッドIoTデバイスチームの植村聖研究チーム長と渡邉雄一研究員、化学プロセス研究部門マイクロ化学グループの西岡将輝主任研究員、同部門機能素材プロセッシンググループの中村考志主任研究員は2018年2月、マイクロ波選択加熱による短時間はんだ溶融技術を開発したと発表した。低耐熱性のプラスチック基板上に、センサー素子などの電子部品をはんだ付け実装することが可能となる。
植村氏らの研究グループは今回、マイクロ波を金属箱内に特定の定在波として発生させるシングルモードマイクロ波照射技術を用いて、電界成分と磁界成分の位置とエネルギー強度を固定した。「TM110」と呼ばれる定在波を利用し、円筒の中心軸に磁界成分のみを集中させ、電界成分を極めて小さく抑えた。これにより、照射対象物に対する電界の影響を低減した。電子レンジなどで用いられているマルチモードのマイクロ波照射法とはこの点が異なる。しかも、TM110を用いたマイクロ波照射法は、中心軸に沿って磁界強度分布が均一なため、大きな面積に照射することが可能だという。
研究グループは、マイクロ波リフロー炉を試作し、開発したはんだ溶融プロセスがフレキシブル基板に与える影響やICチップが受けるダメージなどを調べた。マイクロ波リフロー炉内部では、はんだ部分を選択的に加熱して、はんだを融解させる。センサー素子やキャパシター、抵抗などをはんだ付けする作業は、常温常圧大気中で3秒以内に実行するなど、短時間で完了させることができた。
開発した技術を用いると、極薄ポリエチレンテレフタレート(PET)や伸縮性エラストマーなど、低耐熱性のプラスチック基板上にはんだ付けする場合も、基材のひずみはほとんど無視することができるという。
例えば、耐熱温度が120℃のPET基板上にはんだ付けする場合、通常のリフロープロセスでは0.2%のひずみが生じるという。これに対して開発したマイクロ波リフロー炉を用いてはんだ付けを行うと、基板のひずみを従来の20分の1に改善できる。例えば大きさが10cmの基板を用いた場合、はんだ付けで生じるズレは最大でもわずか10μmだという。
研究グループは、開発したフレキシブルストレッチャブルハイブリッド実装技術を用い、市販されている3×3の温湿度センサーアレイをPET基板上に実装した。厚みが25μmの極めて薄い基板にも対応することができる。また、センサーアレイは配線部分をストレッチャブルにすることも可能で、衣服などへ組み込み温湿度計測などが可能となる。
研究グループは今後、フレキシブルストレッチャブル基板上に、センサー素子やICチップを含め、機能モジュールを実現するために必要な、あらゆる電子部品をはんだ付けするための技術として、早期実用化を目指す。
開発した技術の詳細は、「プリンタブルエレクトロニクス2018」(2018年2月14〜16日、東京ビッグサイト)の会場で発表する。
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