センサーからクラウドまで対応できるメーカーへ TI:embedded world 2018
Texas Instruments(TI)は「embedded world 2018」で、IoT(モノのインターネット)に必要となる、センサー、制御、クラウドへの接続をTIだけで提供できると強調した。
「TIだけで対応できる」ことを強調
Texas Instruments(TI)は、ドイツ・ニュルンベルクで開催された「embedded world 2018」(2018年2月27日〜3月1日)で記者説明会を行い、embedded worldに併せて多数の新製品を発表した。
TIで組み込みプロセッシング関連のバイスプレジデントを務めるRay Upton氏は、IoT(モノのインターネット)に必要な要素である「センシングと測定(Sense & Measure)」「処理と制御(Process & Control)」「接続(Connect)」のそれぞれで、TIは製品群を提供しているとし、「センサーからクラウドまでTIだけで対応できる」と強調した。
「センシングと測定」のところでは、静電容量性タッチ機能「CapTIvate」を搭載したマイコン「MPS430」の新製品として「MSP430FR2512」「MSP430FR2522」を発表した。電磁妨害、油分、水分などが多い過酷な環境にさらされる産業用機器を、主な用途とする。
「接続」向けには、「SimpleLink」ワイヤレスマイコンとして、複数の新製品を発表した。Thread、ZigBee、Bluetooth 5、サブギガヘルツといったマルチスタンダードとマルチバンドの通信を同時に提供する。低消費電力化を図った他、「CC13x2」「CC26x2」のマイコンでは、AES-128/AES-256、SHA2-512、ECC(Elliptic Curve Cryptography)といった暗号化プロトコルに対応する、新しいセキュリティハードウェアアクセラレーターを内蔵している。
Upton氏は、「IoTのネットワークでは、接続することが難しいわけではなく、“堅ろうな”無線ネットワークを構築することが難しい」と語り、SimpleLinkであれば、その堅ろうなネットワークを実現できると述べた。
1チップでミリ波レーダーを実現
展示ブースでは、記者説明会で発表した新製品をはじめ、TIのミリ波センサー「IWR1642」を使った「人の検知システム」のデモも披露した。IWR1642は、トランスミッター回路、レシーバー回路、A-Dコンバーター、DSP、マイコンを搭載していて、従来であれば2〜3チップで構成していたミリ波センサーを、1チップで実現できることが最大の特長だ。IWR1243は76G〜81GHz帯に対応していて、パッケージサイズは10.4×10.4mmである。
デモでは、IWR1642を搭載したレファレンスボードを使い、同ボードの周辺にいる人の数と場所を検知していた。さらに、それを応用して、検知した人物がどこに移動したかをトラッキングするデモも行った。
TIでIndustrial mmWave SensorsのBusiness Manager & Marketing Directorを務めるRobert Ferguson氏によれば、IWR1642が検知できる距離は、物の大きさや材質により変わってくるが、乗用車であれば約120m(トラックは160m)だという。IWR1642は最大4個までカスケード接続でき、4個用いた場合には、検知距離は最大400mだとしている。「ただ、その分消費電力やコストが大きくなるので、そこがトレードオフになる」(Ferguson氏)
さらに、IWR1642でジェスチャーを検知することも可能だ。TIは、「手を左右に振る」といった幾つかのジェスチャーを認識するソースコードを用意している。それをWebサイトからダウンロードし、IWAR1642に実装すれば、ミリ波を使ってそのジェスチャーを検知するシステムを開発できる。Ferguson氏は、「ミリ波レーダーの用途は、自動車から商業施設、介護施設まで幅広い。カメラを使わないので、特に商業施設や介護施設などプライバシーを尊重したい用途で優位性を発揮するのではないか。1チップでシンプルに構成できるIWAR1642は、ミリ波システムの設計で有利になるだろう」と強調した。
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