生産ラインでコスト競争力を生む LittelfuseのSiC:投資と買収でパワー半導体を強化(2/2 ページ)
保護素子を事業の核としているLittelfuseは近年、パワー半導体事業にも注力している。投資や買収によって、SiCパワーデバイスなどのパワー半導体製品のラインアップ拡充を図っている。同社のオートモーティブ・エレクトロニクス担当マーケティングディレクターを務めるCarlos Castro氏が、事業戦略について説明した。
生産ラインでコスト競争力を生む
ただ、SiCパワー半導体市場ではLittelfuseは後発であり、既に強力な競合が存在する。競合他社に対する強みの1つとしてCastro氏は、MonolithのSiCパワー半導体生産ラインを挙げた。「他社ではSiCパワーデバイス製造向けの専用ラインを構築しているが、Monolithが製造をアウトソースしている工場では、基本的にCMOSの製造ライン(6インチウエハー)を使い、少しだけプロセスを変更して製造している。場合によっては、今週はCMOSデバイスを製造し、来週はSiCパワーデバイスを製造する、といったことも可能だ。こうしたフレキシブルなプロセスにより、生産ラインの稼働率を向上することで、コスト競争率の点で強さを生んでいる」(Castro氏)
なお、Castro氏によれば、Littelfuseは現時点ではSiCに集中し、GaNパワー半導体を開発する予定はないという。「ただ、GaNデバイスを採用した回路向けの保護素子の製品展開には力を入れていく」(同氏)
IXYS買収で製品ラインアップを拡充
さらに、2018年1月には、産業、通信、医療など向けの中電圧、高電圧パワー半導体を手掛ける米IXYS(アイクシス)の買収を完了したと発表した。IXYSの2017年の売上高は3億2200万米ドルで、そのうち68%をパワー半導体の売り上げが占めている。Castro氏は「Littelfuse、Monolith、IXYSの3社は、パワー半導体の分野で重複があまりない。一連の投資や買収により、LittelfuseのイグニションIGBTやSBD、MonolithのSiCパワーデバイス、IXYSの中電圧および高電圧MOSFETという製品ラインアップがそろうことになった」と強調した。
前述の通り、パワー半導体事業のターゲット分野の1つが自動車だが、Littelfuseの自動車向け製品における歴史は長い。1930年に自動車用ヒューズを発表して以来、ヒューズを中心に新製品を発表し続け、買収によって自動車要センサープラットフォームやTVS(過渡電圧サプレッサ)ダイオードを市場に投入してきた。現時点で、自動車向け製品(ヒューズ、センサーなど)の売上高は、全体の39%を占めている。
Castro氏は、特に電気自動車(EV)向け製品について「短期的に見れば、最も伸びが期待できるのは高電圧、高耐圧のヒューズだろう。長期的には、SiCパワーデバイスや高電圧MOSFETといったパワー半導体の売り上げがかなり大きくなるとみている」と述べた。日本の自動車市場については、「過電流保護用ポリスイッチなどで、しっかりした顧客基盤を築いている。それをベースに、TVSダイオードやパワー半導体を売り込んで、事業を拡大していきたい」と語った。
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