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スマホが人を乗せて走る――ソニーの提案移動手段を楽しい空間に変える

スマホ自体が人を乗せて走る――ソニーは未来の5G(第5世代移動通信)交通スタイルを体験できる車両を「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2018」会場で提案した。

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沖縄科学技術大学院大学と共同で実証実験

 ソニーは、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2018」(2018年5月23〜25日、東京ビッグサイト)内の特設パビリオン「5G Tokyo Bay Summit 2018」で、5G(第5世代移動通信)時代の新たな移動体験を提案した。その開発コンセプトは「スマホ自体が人を乗せて走る」である。

 未来の5G交通スタイルを体験できる車両は、ソニーが開発したNew Concept Cart「SC-1」である。ベースとなる車体は、リチウムイオン電池を搭載したモーター駆動のヤマハ発動機製ゴルフカート。外形寸法は全長3140mm、全幅1310mm、全高1960mmである。前方や後方に一般車両のような透明なガラス窓はない。


New Concept Cart「SC-1」の外観

 ブースに展示されたSC-1には、周囲の映像を撮影するために、極めて感度が高く高解像度の4Kカメラが前後左右に4台、これらの映像を表示する55型4Kモニターなど、ソニー製のキーデバイスが搭載されている。この他、4K映像を遠隔地と低遅延で送受信するための5G通信システム、走行中などに周囲の人や物体を検知するためのLiDAR(ライダー)や超音波センサーなど、自動運転を支援する機能を組み込んだ。

 4Kカメラには、同社のデジタル一眼レフカメラ「α7S II」に搭載している超高感度イメージセンサーを採用した。「人間の目では直接認識できないような夜間の暗い場所でも、わずかな明るさがあればカメラ映像で認識することが可能」(説明員)という。人間は高齢化などにより、視力が低下することがある。ピントの合ったカメラ映像では、こうした問題も生じないという。また、4台のカメラ映像を組みわせて360°の映像を得ることもできる。なお、4Kモニターはテレビ「BRAVIA(ブラビア)」に用いられているディスプレイを採用した。

左は車内の4Kモニターに表示された前方カメラの映像、右は外部に取り付けられた4Kカメラ(上部)

 SC-1は、携帯電話機の商品企画とメカニカル設計を担当していた2人の社員が中心となって開発に取り組んだという。「自動車にスマホ技術を搭載するのではなく、スマホ自体に人を乗せて移動できるようにしたい」という発想が、開発のきっかけとなった。車体後部には「XPERIA」の文字も見て取れる。

 SC-1は、自動車メーカーが目指す「自動運転」だけでなく、遠隔地から5Gネットワークを介して車両を制御し移動させる「運転代行」のニーズへの対応も視野に入れている。現在、沖縄科学技術大学院大学(OIST)と共同で、遠隔自動運転に関する実証実験を行っている。

 AI(人工知能)技術の活用も視野に入れる。音声やジェスチャーによる操作、搭乗者に関連する情報の提供、カメラ映像と関連するデータを重ねて表示、車両外部に取り付けたモニターに効果的な広告配信など、さまざまな可能性を探っている。

 遠隔自動運転の応用例も挙げた。病院の駐車場から建屋までの移動に利用すると、「移動中に病院内の窓口案内や、薬剤に関する情報などを車両内で確認することができる」という。また、ナイトクルーズの例では、「目視では見えない部分でもカメラ映像で確認することができる。関連する画像データや音を、実際の映像と重ねて表示すれば、搭乗者は新たな体験ができる」と話す。単なる移動手段を、楽しい空間や時間に変える。これが、新たに提唱する5G時代の交通スタイルである。

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