連載
埋め込みMRAM技術がフラッシュとSRAMを置き換えへ:福田昭のストレージ通信(103) GFが語る埋め込みメモリと埋め込みMRAM(3)(2/2 ページ)
今回は、GLOBALFOUNDRIESが提供する埋め込みMRAMマクロの概要を解説する。
データ保持重視のMRAM技術と書き換え重視のMRAM技術
フラッシュ代替用埋め込みMRAM(eMRAM-F)と、SRAM代替用埋め込みMRAM(eMRAM-S)では、性能がかなり違う。eMRAM-Fは15年以上と長いデータ保持期間を特長としており、eMRAM-Sは10の14乗回と多い書き換えサイクル回数を特長とする。eMRAM-Fの書き換えサイクルは10の8乗回、eMRAM-Sのデータ保持期間は1カ月である。
データを読み書きする速度はeMRAM-Sが高く、eMRAM-Fが低い。ただしeMRAM-Fの読み書きは遅いとは言っても、書き込みの速度は埋め込みフラッシュよりも高い。メモリセル面積はeMRAM-Fが小さく、eMRAM-Sが大きい。
使用温度範囲の高温側は、eMRAM-Fが高い。自動車用のグレード1(G1)対応品だと150℃に達する。産業用でも125℃とかなり高い。eMRAM-Sはエンタープライズ向けなので、高温側の温度は105℃とやや低めになる。
その他の重要な違いに、プリント基板実装におけるハンダ付け(高温処理)への対応がある。eMRAM-Fは260℃のリフローハンダ付けを許容する。eMRAM-Sは260℃のハンダ付けには対応しない。これは対象となるプロセッサが、通常はソケットで実装されるからだと思われる。
(次回に続く)
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 微細化限界に達したフラッシュをMRAMで置き換え
埋め込みフラッシュメモリが直面する課題は、微細化の限界である。GLOBALFOUNDRIESは、2xnm以下の技術世代に向けた埋め込み不揮発性メモリとして、MRAM(磁気抵抗メモリ)を考えている。 - STT-MRAMの基礎――情報の蓄積に磁気を使う
次世代不揮発メモリの候補の1つに、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)がある。データの読み書きが高速で、書き換え可能回数も多い。今回から始まるシリーズでは、STT-MRAMの基本動作やSTT-MRAが求められている理由を、「IEDM2015」の講演内容に沿って説明していこう。 - 次期MCUはFD-SOI、STトップ「シリコン回帰」強調
MEMS製品やARMマイコンに強みを持つSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)。同社のCEOであるCarlo Bozotti氏は、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)などが、他社との差異化技術になると強調する。 - TSMCがロードマップを発表、EUV導入は19年前半
TSMCは、7nmプロセスの量産を開始し、さらにEUV(極端紫外線)リソグラフィを導入したバージョンの生産を2019年前半にも開始する計画も発表した。さらに、同社は5nmノードに関する計画も明らかにした。 - GF、12nm FD-SOIプロセス「12FDX」を発表
GLOBALFOUNDRIES(GF)が、22nmプロセスを用いたFD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ)のプラットフォーム「22FDX」の後継となる次世代FD-SOIプロセス「12FDX」を発表した。GFによると、「10nm FinFETプロセスを超える性能を提供することが可能」とし、2019年の製造開始を計画する。 - EUVと液浸、FinFETとFD-SOI、GFの強みは2点張り
2017年5月31日、来日したGLOBALFOUNDRIES(グローバルファウンドリーズ/GF)CMOSプラットフォーム事業部シニアバイスプレジデントのGregg Bartlett氏に7nm FinFET、12nm FD-SOIの開発状況などについてインタビューした。