歩行パターンから本人認証、次世代の生体認証技術:空港警備に使える?
英国マンチェスター大学の電気電子工学科大学院は、スペインマドリード大学と共同で、行動バイオメトリクス認証システムを開発した。このシステムは、床に置かれた圧力パッドの上を歩いている人の歩き方や歩行パターンを測定し、足跡を分析することで、その人物を簡単に照合できるというものである。
歩行パターンで本人確認
英国マンチェスター大学の電気電子工学科大学院は、スペインマドリード大学と共同で、行動バイオメトリクス認証システムを開発した。このシステムは、床に置かれた圧力パッドの上を歩いている人の歩き方や歩行パターンを測定し、足跡を分析することで、その人物を簡単に照合できるというものである。
研究者らは、人間の歩き方と足跡を分析するこのシステムが、空港警備での生体測定に貢献するのではないかと主張する。空港では現在、指紋認証や虹彩認証が行われているが、それらに代わる非侵入型の人物認証システムが実現するかもしれない。歩行による認証の利点は、スキャンなどとは異なり、完全に非浸襲だということだ。靴を脱ぐ必要もない。
機械学習の研究誌「IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence(TPAMI)」に2018年初めに掲載された論文では、正しく開発されたAI(人工知能)システムは、ほぼ100%の確率で人物を認証し、エラー率はわずか0.7%だったことが示されている。
指紋、顔、虹彩を活用する生体認証は、セキュリティ目的で既に幅広く用いられている。だが、歩行認識などの行動バイオメトリクスでも、人間の生まれもった行動や動きのパターンが生み出す独自のサインを捉えることができる。研究チームは、「空港のセキュリティチェックポイント」「職場」「自宅」という3つの環境でのセキュリティに関するシナリオを用いて、大人数のいわゆる「インポスター(替え玉)」と少数のユーザーを使ったデータ試験を行った。
この研究を主導した、マンチェスター大学 電気電子工学科大学院の教授であるOmar Costilla-Reyes氏は、「人間の歩き方は、約24個の要素と動きで構成されていて、一人一人が自分だけの歩行パターンを持っている。そのため、それらのパターンをモニタリングすることで、指紋や虹彩などと同様に、個人を明確に認識、特定できる」と説明している。
コンピュータが動きのパターンを学習するために必要なAIシステムを開発するため、研究チームは膨大な数の足跡データベースを収集した。そのデータベースには、127人から集めた約2万歩分の信号が収められているという。研究チームは、床にのみ設置されたセンサーと高解像度カメラを用いて、サンプルとデータを蓄積した。
Costilla-Reyes氏は、このデータセット(「SfootBD」と呼んでいる)を用いて、足跡によるバイオメトリクス認証に必要となる高度な計算モデルを開発した。同氏は、「歩行中に床にかかる力をモニタリングし、歩行認識に結び付けることは、非常に難しかった」と説明している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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