世界初「ディスプレイ指紋認証スマホ」分解で感じた中国Vivoの魅力:製品分解で探るアジアの新トレンド(29)(3/3 ページ)
今回は、世界で初めてディスプレイ指紋認証機能を実現したとみられるスマートフォン「Vivo X20 Plus UD」(Vivo製)を分解し、チップ内部も含めて観察した様子を報告する。世界的なスマホメーカーに成長したVivoの端末の魅力を感じることができた。
ディスプレイ指紋認証以外にもあったVivoの魅力
図4は、「X20 Plus UD」のメインの基板の様子である。基板には各種モーション系センサー、通信およびアプリケーションプロセッサとしてQualcommの「Snapdragon 660プラットフォ―ム」が搭載されている。プラットフォームの手足として通信用パワーアンプ、オーディオ用D-Aコンバーター(DAC)がつながっている。
オーディオ用DACは、ホーム向け高級オーディオなどにも採用されマニアにも評判の高い、ESSTechnologyのDACが採用されている。実際中国メーカーのスマートフォンではESSやCirrus LogicのDACは定番となっている(日本ではパイオニアなどがESSを採用している)。
さらにカメラとQualcomm製プロセッサの間に、画像処理用コプロセッサとして中国のRockchip製DSPを用いたプロセッサが搭載されている。このコプロセッサはQualcommチップにはない、高度な画像処理を行うことができ、写真の明度や奥行きを大幅に補正する機能を持っている。なお、このコプロセッサシリーズはさらに進化する模様であり、今後のRockchip製プロセッサにも注目して、本連載で報告したいと思っている。
世界的メーカーとなったVivoに注目したい
Vivoは、日本ではあまり知られていないスマートフォンメーカーだが、2017年のスマートフォン販売額ランキングで中国国内3位、世界5位にいるトップメーカーであり、中国のBBKグループの一員として成長を続けている。2012年には当時世界最薄となる厚み6.55mmのスマートフォン「X1」を発表し、大きな話題となった。
今回のX20 Plus UDでは、世界初のディスプレイ指紋認証対応端末を製品化し、さらに高級DACを積みビジョンコプロセッサも搭載するという、取り組みを成し遂げ、トラブルもなく、CES 2018でのアナウンスの直後に販売を開始した。
Vivoの技術もブランド力も高まっている。この先もVivo製品の観察は楽しみだ。
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