Wi-Fi、6GHz帯対応に向け始動:次世代EHT規格
エンジニアらは、スループットを最大で4倍高めることができる次世代のWi-Fi規格の策定を開始することで合意した。このEHT(Extreme High Throughput)規格は、6GHz帯をサポートするよう開発された初めての規格となる見込みだ。
エンジニアらは、スループットを最大で4倍高めることができる次世代のWi-Fi規格の策定を開始することで合意した。このEHT(Extreme High Throughput)規格は、6GHz帯をサポートするよう開発された初めての規格となる見込みだ。同規格以降、Wi-Fi規格のリリース頻度は高まるとみられている。
開発者らは、2020年までに6GHz帯を免許不要で、Wi-Fiおよびセルラーの両方で使用できるようになることを望んでいる。Wi-Fiの支持者らは、2020年までに「IEEE 802.11ax(以下、802.11ax)」を6GHz帯向けに改良し、その後2023年までにはEHT規格によって実装することを目指している。
EHT構想の背景には、802.11axの標準化に、予想よりも長い時間がかかっていることに対する失望がある。802.11axは初期ドラフトがようやくリリースされたところだが、そこまで来るために実に4年以上の年月を要した。802.11関連のプロジェクトでは、これまでで最も長い年月がかかっている。
開発当初から、802.11axの複雑性は予想以上に長い議論を生み出していた。Wi-Fiの専門家であるIntelのLaurent Cariou氏によると、開発の終盤になって、エンジニアらが数多くの新機能を同仕様に組み込もうとしたため、さまざまな技術的課題が生じ、その解決までに時間がかかったのだという。
これまで、エンジニアらがEHTについて掲げていたのは、スループットを理論上最大まで(つまり4倍)に高めながら、効率性とレイテンシを改善するという目標だけだった。EHTの正式な開発が始まる前に、研究グループがより詳細な目標を打ち出すだろう。
レイテンシの目標は、映像、ゲーム、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、時間的制約のある産業ネットワークを対象にしたものである。Intelの分析では、Wi-Fiはセルラー方式を上回るミリ秒のレイテンシを実現することが分かった。だが、複数のユーザーがメディアを共有している場合や、大きな干渉に直面している場合に、レイテンシをそのレベルに維持するには、エミッションや同期の制御が必要となる。
APを調整して通信範囲を拡張
EHTでは、アクセスポイント(AP)を調整して通信範囲を拡張する機能の追加も目指すという。これにより、Wi-Fi AllianceにおけるマスターAPならびにスレーブAPに対する取り組みが強化されることになるだろう。この取り組みは、最も低いコストで家全体にWi-Fiが届くようにすることを目指したものである。
EHTでは、16本のストリームもサポートするようになる見込みだが、これは802.11axの2倍に相当する数である。さらに、APは複数の帯域にわたる同時多重伝送に対応するようになるという。
一部の観測筋によれば、これまでWi-Fi規格は市場をけん引してきたという。既に8本ものアンテナに対応し、約5Gビット/秒(bps)のスループットを実現している。一方、一般的な商業用APのアンテナは最大で4本であり、インターネットアクセスプロバイダーの多くは、ようやくGビット/秒クラスのリンクをリリースしているところである。
Cariou氏らは、成長を続けるアクセスネットワークで先行することは、よいことだと主張している。Wi-Fiの高速なデータ速度は高い効率性をもたらし、ネットワーク負荷を抑えるうえに、デバイスのバッテリー寿命を節約する。
この先の最も大きな課題の一つは、免許不要の6GHz帯を使用できるようにすることだ。同帯域は、衛星、公共安全のためのネットワークのほか、モバイルバックホールを行う通信キャリアによって一部が使用されている。
Cariou氏によると、各企業は、将来性がありそうな米国やヨーロッパの規制機関との話し合いを進めているという。EHTメンバーの一部は既に、2.4GHz以上、5GHz、6GHzの帯域でデータを同時に送受信するAPの可能性に関するプレゼンテーションを行っているようだ。
セルラー業界の主要な規格団体である3GPPは、6Hzなどの免許不要の帯域に対応するバージョンの5G(第5世代移動通信)システムの開発に取り組んでいる。Cariou氏は「これは検討事項の一つだと思われるが、恐らく802.11よりも動きは速いだろう」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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