中国に対する関税措置、米半導体業界にダメージ:業界の懸命な訴えは届かず
米国の半導体業界による懸命な訴えにもかかわらず、中国の輸入製品に対する関税措置の第2弾では、数十億米ドル相当の半導体も対象になる。米トランプ政権は2018年8月7日、年間輸入額160億米ドル相当の中国製品に25%の関税を適用する計画を2018年8月23日に開始することを最終決定した。
米国の半導体業界による懸命な訴えにもかかわらず、中国の輸入製品に対する関税措置の第2弾では、数十億米ドル相当の半導体も対象になる。
米トランプ政権は2018年8月7日、年間輸入額160億米ドル相当の中国製品に25%の関税を適用する計画を2018年8月23日に開始することを最終決定した。第1弾として340億米ドル相当の中国製品に対する関税措置が2018年7月6日から実施されているが、第2弾の製品群への関税措置によって、米国と中国の間の貿易戦争が激化すると予想される。
2018年8月7日に公開された対象リストには、数多くの半導体と関連製品が挙がっている。米国半導体工業会(SIA)の見積もりによると、関税措置第2弾の対象となる2つの関税区分の1つには、年間輸入額約63億米ドル相当の半導体と関連製品が含まれているという。リストに挙げられている半導体関連製品は、半導体製造装置やダイオードなどのデバイスである。
SIAと半導体製造装置材料協会(SEMI)は、半導体と関連製品を対象リストから削除するよう求めて、2018年7月24日に米貿易委員会(ITC)が開いた公聴会で、書面による声明を提出し証言を行った。SIAとSEMIはどちらも、資本設備メーカーやEDAベンダー、エレクトロニクスサプライチェーンのその他の企業で構成されている。両団体は、「半導体に関税を課すことは、米国の半導体企業の国際際的な競争力を弱らせ、中国における米国企業の市場シェアを脅かすとともに、米国の輸出と雇用に打撃を与え、米国の消費者向け商品の価格の高騰につながる」と主張している。
SIAのプレジデント兼CEO(最高経営責任者)務めるJohn Neuffer氏は、2018年8月7日に発表した声明の中で、「半導体業界が訴えてきたにもかかわらず、半導体や関連製品が対象リストに残っていることに、SIAは失望し困惑している」と述べている。
トランプ政権は、中国との二国間協議で約3750億米ドルに上る2017年度対中国貿易赤字の削減を求めたが、中国の合意が得られなかった。これを受け、第1弾の関税措置が実施された。トランプ政権は、「反競争的な中国の政策を抑制し、米国企業の知的財産権の保護を改善する広範な貿易協定が結ばれない限り、関税措置は必要だ」と主張している。
SIAとSEMIの両団体は、知的財産権の是正を目指している点についてはトランプ政権を支持している。しかし、米国のほとんどの業界団体や経済学者、アナリストの見解と同様に、「世界経済に悪影響を及ぼし、米国企業や消費者に不利益をもたらすことになる」として関税措置には反対している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 米半導体業界、中国に対する関税措置第2弾に反対
米国の半導体メーカーと半導体製造装置メーカーは、米トランプ政権に対して、25%の関税措置の対象となっている160億米ドル相当の中国からの輸入品のリストから39の製品カテゴリーを削除するように求めた。 - 1つのシリコンを使い尽くす ―― 米国半導体メーカーの合理的な工夫
半導体チップ開発は、プロセスの微細化に伴い、より大きな費用が掛かるようになっている。だからこそ、費用を投じて作ったチップをより有効活用することが重要になってきている。そうした中で、米国の半導体メーカーは過去から1つのチップを使い尽くすための工夫を施している。今回はそうした“1つのシリコンを使い尽くす”ための工夫を紹介していく。 - 製造装置の国産化を加速する中国
「中国製造2025」の一環として半導体産業の強化を掲げる中国。今、中国国内には巨大な半導体製造工場が立ち上がりつつある。半導体製造装置については日米欧の寡占状態にあるが、中国は製造装置の内製化も進めようとしている。中国による製造装置の国産化は、どの程度まで進んでいるのか。 - 米国、半導体への投資を増加する動き
米国の国防総省(DoD:Department of Defense)は、エレクトロニクス関連の幅広い取り組みに22億米ドルを投じるプロジェクトを推進中だという。2018年7月23〜25日(米国時間)にカリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Electronics Resurgence Initiative Summit 」で明らかになった。 - QualcommがNXPの買収を断念、中国の承認が時間切れ
Qualcommは2018年7月26日(米国時間)、中国当局の承認を待たず、NXP Semiconductorsの買収を断念すると発表した。これによりQualcommは、同年7月26日にNXPに違約金20億米ドルを支払う。 - AppleとQualcomm、法廷闘争に至るまでの経緯
AppleとQualcommの法廷闘争は長期化し、解決の時期を見通すことが難しい状況になっている。両社の係争は、なぜここまで泥沼化してしまったのか――。その背景には複雑な取引契約の背景があった。