「専用機は作らない」、潔さでテスターの効率を上げたKeithley:汎用SMUをベースに構築(2/2 ページ)
米Keithleyの半導体テストシステムは、同社が提供する汎用SMU(ソースメジャメントユニット)をベースに構築されている。これが生むメリットとは何か。
アナログ分野に注力
1100Vに対応する「S530」や、3000Vに対応する「S540」は、特に車載や次世代パワー半導体などの分野からの注目度が高いという。S540では、1回のタッチダウンで低電圧から高電圧までのテストを、同じプローバータッチダウンで行える。Cejer氏は、「当社のテストシステムは、とりわけアナログ分野での用途に強い。DRAMなどに比べるとアナログ製品は少量多品種の分野だ。そうした用途では、柔軟性の高いテストシステムが必要になる」と述べる。
シングルプラットフォームのソフトウェア
Keithleyのテストシステムでもう一つ特徴的なのがソフトウェア「KTE(Keithley Test Environment)」である。他のテストシステムメーカーでは複数のソフトウェア環境で提供されることがほとんどだが、KTEはLinux対応のシングルプラットフォームとして提供されている。木下氏は「当社のようにシングルプラットフォームで提供しているメーカーは意外と珍しい。他社の場合、ソフトウェアの開発元が別会社というケースもあるが、KTEは一貫して自社で開発しているので、顧客の要望に合わせてアップデートしやすい」と説明する。
KTEは、ほぼ毎年アップデートされている。Cejer氏によれば、2018年に登場した最新の「KTE 5.8」バージョンでは、下位バージョンである「KTE 5.5」に比べて測定スピードが70倍も高速化したという。その他、KTE 5.8では先述したMulti-Site Parallel Test機能などが追加されている。
日本ではテストシステムの入れ替え時期に差し掛かっている
木下氏は、日本市場ではS530が最も普及していると述べる。「日本では、旧モデルの『S400』がかなりの台数があり、S530へのリプレースが進んでいる。日本のメーカーは同じテストシステムを20〜30年前から使い続けているところも多く、そうしたシステムの中には間もなくEOS(End of Service)を迎えるものもある。デジタルやロジックでは、装置の入れ替えに積極的に投資することも多いが、ピコアンペアやナノアンペアレベルのDC電流を計測するようなシステムは、環境のよい場所に置かれることも多いので、あまり故障しない」(木下氏)
とはいえ、リプレースが必要になる時に、まずは初期投資と運用コストを抑えたいというのが、顧客の要望だ。木下氏は、「Keithleyのテストシステムは、装置全体を買い替えるのではなく、新しい汎用SMUが登場したら、そこだけを変更してもらえれば新しい機能の恩恵を受けることができるようになる。それがKeithleyの強みだ」と強調した。
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