全固体電池市場、2035年に2兆7877億円規模へ:次世代電池市場を富士経済が調査
富士経済の調査によると、電気自動車(EV)向けとして注目される全固体型リチウム二次電池(全固体電池)市場は、2035年に2兆7877億円規模へ達する見通しだ。
2020年代にEVへの搭載始まる全固体電池
富士経済は2018年8月、次世代電池の世界市場を調査し、その結果を発表した。これによると、電気自動車(EV)向けで注目される全固体型リチウム二次電池(全固体電池)は、2035年に2兆7877億円の市場規模と予測する。
富士経済が実施した次世代電池の市場調査は、全固体電池の他、ポストリチウム二次電池として期待される金属空気二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池を対象とした。現状で一定規模を形成しているのは全固体電池のみだが、ポストリチウム二次電池も、安いコストや低い環境負荷などを強みに、2035年以降は市場が本格的に立ち上がるとみている。
EV向け電池としては現在、リチウムイオン二次電池が多く用いられている。しかし、航続距離の延長や安全性などの課題もある。こうした中で注目されているのが全固体電池である。2020年代には全固体電池がEVに搭載されるとみられている。
今回の調査では、全固体電池の中で硫化物系、酸化物系、高分子系、錯体水素化物系を対象とした。リチウムイオン二次電池に比べてメリットは多い。例えば、「高容量の正極活物質や負極活物質を適用することが可能」「急速充電に適している」「リチウムイオン輸率が1で安全性が高い」「出力特性、エネルギー密度、温度特性、サイクル特性、難燃性に優れる」「バイポーラ電極が形成可能」「ロールツーロールで製造可能」「高いリサイクル性」「液漏れをしにくい」などを挙げた。
全固体電池の市場規模は、2017年に21億円となった。海外メーカーによる自動車向け高分子系全固体電池が市場を主導している。日本メーカーは硫化物系全固体電池を開発中で、EV向けに2020年代前半の量産化を目指す。
酸化物系全固体電池は、IoT(モノのインターネット)機器やウェアラブル機器向け小型電源として期待されている。自動車などに向けた大型電池は、台湾や中国メーカーが疑似固体のシート型電池を開発している。全固体のシート型が実用化されるのは2030年ごろと予想する。
2035年における全固体電池市場は2兆7877億円と予測した。このうち、電池の大型化に向く硫化物系全固体電池が2兆1200億円を占める見通しだ。これに対して、大型化が難しい酸化物系全固体電池は6120億円と予測した。市場の立ち上がりこそ遅いが、安全性や安定性に優れているため、2035年以降の需要拡大に期待する。
全固体電池の製造には、正極活物質や負極活物質など、これまでリチウムイオン二次電池に用いていた材料を利用でき、電解液やセパレーターは不要となる。さらに、現行材料に加え、正極活物質では高容量の硫黄やコバルトフリーの5V級スピネルを、負極活物質では極めて高容量の金属リチウムなど、新たな材料を用いることが可能だという。
なお、今回の調査結果は、「2018 電池関連市場実態総調査 No.1」としてまとめた。
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