IPC規格、接続信頼性の試験時間を大幅短縮:NASAやJAXAの担当者が講演(3/3 ページ)
IPCとジャパンユニックスは、宇宙航空向け機器で高い信頼性を実現するために活用されている、品質標準規格「IPC」の追加規格や応用事例を紹介するセミナーを開催した。
3カ月が1時間程度に
JAXA認定部品として現在は、24社の約150品種が認定されている。このうち、宇宙用プリント配線板は仕様別に7種類の付則が制定されており、3社の製品が認定されている。認定製品の試験方法や抜き取り基準、設計基準はMIL(MIL-STD-202)やJIS(JIS C 5012)、IPC(IPC-TM-650)といった規格を適用文書、参考文書としている。
プリント配線板の試験技術に関して、IPCのIST(Interconnect Stress Test)について検討、その有効性について紹介した。JAXA-QTSに規定された熱衝撃試験は、1000サイクルの試験に、3カ月間を要していた。これが、ISTでは1時間当たり12サイクルの試験を行うことができるため、短期間で温度サイクル試験が可能になるという。
JAXAは、2種類の基板材料を用い、同一メーカーが同じ条件で製造した基板を用いて、熱衝撃試験とISTの結果を比較した。評価基板は、14層で板厚2.4mm、スルーホールキリ径0.2mmのポリイミド材基板と、18層で板厚3.0mm、スルーホールキリ径0.2mmの低誘電率材基板である。
ポリイミド基板について試験を行い、抵抗値変化率が+6.7%となるサイクル数を比較したところ、熱衝撃試験は3000サイクル(約3000時間)に対し、ISTは1400サイクル(約116時間)であった。この結果、ISTはサイクル数が約2分の1と少なく、試験時間は25分の1で済むことが分かった。
同様に、低誘電率材基板についても、抵抗値変化率が+4.1%となるサイクル数を比較した。この結果、熱衝撃試験は3000サイクル(約3000時間)、ISTは3300サイクル(約275時間)となった。サイクル数は削減されなかったが、試験時間は約10分の1になることが分かった。この他、メッキ厚などを変えつつ、製造プロセスが異なる2社が基板を作製してISTを行うなど、さまざまな条件でその有用性を検討した。
これらの結果から、「ISTをJAXA規格に規定するには、さらなる確認が必要となるが、基礎評価などにおいて、短期間で接続信頼性を確認するには有効である」との考えを示した。
IPC標準書の日本語化と、トレーニング体制を強化
なお、ジャパンユニックスはIPC標準書の日本語化に取り組み、資格取得のためのトレーニングなどを実施している。現在、「IPC-6012D」や「IPC-6012DS」「IPC-6012DA」の日本語化を進めているという。また、新たにトレーニングルームを建設中である。今後、リワークやリペアに特化したトレーニングと認証取得プログラムなどを開催する予定となっている。
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