Huaweiが最新の7nm SoCを発表、シェア拡大に弾み:18Q2の出荷数はAppleを抜いた
Huaweiは、ドイツ ベルリンで2018年9月初頭に開催された家電展示会「IFA 2018」において、新しいフラグシップSoC(System on Chip)「Kirin 980」を発表した。アナリストたちによると、Huaweiは、Appleを追い抜いて世界スマートフォン市場第2位の座を獲得した今、新型チップを発表することにより、さらに市場シェアを拡大していくとみられる。
7nmを採用したHuaweiのSoC
アナリストたちによると、Huaweiは、Appleを追い抜いて世界スマートフォン市場第2位の座を獲得した今、新型チップを発表することにより、さらに市場シェアを拡大していくとみられる。
Huaweiは、ドイツ ベルリンで2018年9月初頭に開催された家電展示会「IFA 2018」において、新しいフラグシップSoC(System on Chip)「Kirin 980」を発表した。7nmプロセスを適用し、業界で初めてNPU(ニューラル処理装置)を2つ搭載するなど、AI(人工知能)の機能を搭載したスマートフォンの実現に向けたトレンドの先頭に立っていると主張する。
Kirin 980の製造は、TSMCが手掛ける。TSMCの7nmプロセスは、Appleが2018年9月12日(現地時間)に発表したばかりの最新「iPhone」に搭載されているSoC「A12」にも適用されている。
Sinolink Securitiesの技術部門で責任者を務めるAndrew Lu氏は、「HuaweiにとってKirin 980は、7nmプロセス開発に後れを取っているメーカー各社に対して市場シェアを拡大していく上で、大きな後押しとなる技術的進歩だといえる」と述べている。
同氏は、EE Timesのインタビューに対し、「新しいKirin 980チップは、Huaweiにとって、Samsung ElectronicsやXiaomi、OPPOなどのメーカーに対して、スマートフォン市場におけるシェア拡大をサポートする存在となるだろう。HuaweiとTSMCにはプラスの効果がもたらされるが、Samsungにとってはマイナス効果となりそうだ」と述べる。
TSCMの7nmプロセスを使用している(あるいは使用するとみられる)顧客の割合の予測。Huaweiの子会社で、「Kirin 980」を設計したHiSiliconが、Appleに次ぐ顧客となっている 出典:Bernstein
この他にも影響を受けるとみられるのが、スマートフォンSoCを手掛ける2大メーカーであるQualcommとMediaTekだ。
Lu氏は、「Qualcommが、競争力のあるチップを開発できるようになるのは、2018年第4四半期か2019年初めごろになるとみられる。またMediaTekは、それよりもさらに遅くなりそうだ」と述べる。
同氏によると、Appleへの影響は、それほど大きくないようだ。「Kirin 980のトランジスタ数が69億個であるのに対し、AppleのA12は約68億個だ。消費電力量や性能に関しては、Kirin 980よりもA12の方が優れているといえる」(Lu氏)
Kirinは、7nmプロセスの適用により、Huaweiの旧世代品と比べて、ダイスペースを約60%広げることが可能になったため、NPU(Neural Processor Unit)を追加できるようになった。「iPhone X」に搭載されているA11は、最大6000億OPS(Operations Per Second:オペレーション/秒)のNPUを備え、Face IDやAnimoji(アニ文字)、マシンラーニング(機械学習)タスクなどのAI機能向けとして使われている。Huaweiによれば、Kirin 980もこうした機能を実現できるという。
Huaweiは2018年第2四半期(4〜6月期)の世界スマートフォン出荷台数で、Appleを超え、Samsungに次ぐ2位となった。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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