第5世代移動通信(5G)市場の幕開けとこれからの道のり:IHSアナリスト「未来展望」(11)(2/2 ページ)
第5世代移動通信(5G)の本格導入に向けて動きが加速し、まさに5Gの幕開けを迎えつつある。5Gの現状と、5Gがこれからどのように活用されていくのかを考えていきたい。
デバイス・端末への波及
こうした流れを受け、5G用の半導体の需要が増加している。インフラ機器向けでは電源および、高周波デバイスの需要が旺盛になっている。これまで通信用デバイスといえばガリウムヒ素(GaAs)ベースに加え、窒化ガリウム(GaN)デバイス、シリコン、シリコンゲルマニウム(SiGe)などにも引き合いが強まっている。これらの新しい種類のデバイスは高効率化、生産技術の改善に加え、種類の広がりで市場のニーズに対応しているといえる。また、5G対応端末が現れるのは実質2019年以降とされるが、チップセット大手のQualcommは、直近の決算発表で5G関連ライセンスをすでに複数のスマートフォンメーカーと結んだことを発表し、今後の拡がりへの期待も見せている。
“5Gの活用=移動通信+α”の世界への展開
5Gの活用は、いわゆるスマートフォンを中心としたモバイルネットワークにとどまるものではないと考えられる。IHS Markitでは、5Gの生み出す経済価値はこれまでの移動通信の世代交代に比べて、緩やかかつ長期間にわたって生成されるものと予測をしている。
商用化に向けて進めている通信キャリアにおいても、収益の成長率が低下している現状では5G事業化の成否はユースケース次第で、それまでは先行費用が収益を圧迫するといっている。IHS Markitの直近の調査では、5G事業化のドライバはまずeMBB(Enhanced Mobile Broadband)、続いてリアルタイムのゲーム、高解像度の動画、さらに続いてIoTといった意見が多く挙げられた。これらをマネタイズするには、キャリア、機器メーカー、コンテンツプロバイダーの横断的な協業が不可欠と考えられる。振り返ってみると、LTEの普及以降で移動通信の世界一大市場となった中国では、SNS、ゲームなどのコンテンツ市場の拡大に加え、決済やモビリティサービスもモバイル端末を介して市場が拡大している。これらのエコシステムには膨大なセンサーや通信機器を搭載した機器が使われていることで、IoTも含めたスマートフォン+αの機器やサービスが将来的には中国5Gインフラを使う経済圏になることが予測される。
5Gの商用化が現実となりつつある現在において、“5Gの活用”=“いわゆるこれまでの移動通信+α”のユースケースの開拓があらゆる業種で求められることになろう。
筆者からのお知らせ
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大庭 光恵(おおば・みつえ)氏/IHS Markit Technology
1999年〜ドイツ証券、クレディ・リヨネ証券で産業用エレクトロニクス担当アナリストを担当。その後アセットマネジメント会社にて電子機器、部品、材料、ITサービスのアナリスト/ファンドマネージャーを担当。
2012年〜現職、IHS Markit Technologyのシニアアナリストとして、市場分析/ビジネス分析を手掛ける。
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