STT-MRAMの不良解析を高精度・高効率で実現:スイッチング電流の測定技術確立
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)の遠藤哲郎センター長らによる研究グループは、アドバンテストと共同でスピン注入型磁気ランダムアクセスメモリ(STT-MRAM)のスイッチング電流を、高い精度で高速に測定する技術を確立した。
ReRAMやPCRAMなどの評価にも適用可能
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)の遠藤哲郎センター長らによる研究グループは2018年10月、アドバンテストと共同で、スピン注入型磁気ランダムアクセスメモリ(STT-MRAM)のスイッチング電流を、高精度で高速に測定する技術を確立したと発表した。STT-MRAMの本格量産に向けた開発に弾みを付ける。また、ReRAM(抵抗変化型メモリ)やPCRAM(相変化メモリ)などの評価にも適用可能な技術だという。
遠藤氏らの研究グループとアドバンテストはこれまで、STT-MRAMのメモリ性能を評価することができる測定システムの高度化に取り組んできた。しかしこれまでは、STT-MRAMのメモリセル上でスイッチング電流の測定を行うことは困難だと言われてきた。それは、熱エネルギーによる揺らぎの影響を受けることや、電流が極めて小さく流れる時間も短いためである。このため、特性評価や不良解析を効率よく行うことができなかった。
こうした中で共同研究グループは、スイッチング動作時の微小な電流値を高い精度で高速に測定できるモジュールを開発した。このモジュールをアドバンテスト製のメモリテスター「T5385ES」に搭載し、STT-MRAMがスイッチングする際の微小な電流値変化と、スイッチング試行ごとに変化する遷移時間(IRapからIRpへ)を測定することに成功した。
実験では、直径300mmのシリコンウエハー上にSTT-MRAMテストチップを試作し、ウエハー全面で測定を行った。この結果、マイクロアンペア単位の電流値と、ナノ秒単位の遷移時間を測定することができたという。
研究グループは、引き続きSTT-MRAM用メモリテスターの高度化技術を研究するとともに、STT-MRAMに特化した量産向けテスターの製品化を目指す考えである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- グラフェンナノリボンで不揮発性メモリ、東北大が開発
東北大学は2018年8月8日、原子オーダーの厚みを持つシート材料である「グラフェンナノリボン(GNR)」を用い、耐環境性に優れた新型メモリの開発に成功したと発表した。水中でも動作可能なフレキシブル不揮発性メモリなど、幅広い応用が期待できる技術としている。 - 東北大、AlB2で線ノード型ディラック粒子を発見
東北大学は2018年7月、2ホウ化アルミニウム(AlB2)が「線ノード型ディラック粒子」という特殊な電子状態を持つ物質であることを発見した。 - GaN-HEMTの表面電子捕獲機構を解明、東北大など
東北大学電気通信研究所の吹留博一准教授らは、GaN(窒化ガリウム)を用いた無線通信用高速トランジスタ(GaN-HEMT)の出力低下につながる表面電子捕獲のナノスケール定量分析と、その抑制機構の解明に成功した。 - 東北大ら、Fe-Ga単結晶製造と加工技術を開発
東北大学多元物質科学研究所と金沢大学、福田結晶技術研究所の研究チームは、振動発電デバイスのコスト削減を可能にする単結晶製造技術および、板状に加工する技術を開発した。 - 磁気トンネル接合素子、直径3.8nmで動作確認
東北大学電気通信研究所の大野英男教授らによる研究グループは、不揮発性磁気メモリ「STT-MRAM(スピン移行トルク−磁気抵抗RAM)」の大容量化を可能とする磁気トンネル接合素子の新方式を提案し、動作実証に成功した。 - ホウ素の分析強度を3倍に、半導体の性能向上に期待
東北大学らの研究グループは、現行の電子顕微鏡用軟X線発光分光器(SXES)を改良し、ホウ素の分析強度を3倍以上に高めることに成功した。