高アスペクト比の細長い孔をハードマスクによって形成(続き):福田昭のストレージ通信(122) 3D NANDのスケーリング(10)(2/2 ページ)
前回に続き、3D NANDフラッシュ製造におけるキープロセスの1つ、「高アスペクト比(HAR:High Aspect Ratio)のパターン形成」を取り上げる。今回は、同技術の異方性エッチングについて解説する。
3D NAND製造では厳しいエッチング精度を要求
エッチング技術には大別すると、等方性エッチングと異方性エッチングがある。等方性エッチングとは、全ての方向に同じ速度で削っていくエッチングのことだ。例えば円形の孔が開いたマスクがあると、その下にある薄膜層では、半球状に薄膜が削られていく。言い換えると、マスクよりも孔が広がり続ける。時間とともに加工寸法(横方向の寸法)が変化するので、微細加工にはあまり向かない。
これに対して異方性エッチングは、特定の方向だけが削られていく。最もよく使われるのは、縦方向(垂直方向)だけが削られる異方性エッチングである。垂直方向だけが削られるということは、マスクの孔と同じ形で、くぼみが作られるということだ。すなわち、加工寸法(横方向の寸法)が変化しない。微細加工に適している。
ただし、3D NANDフラッシュメモリが要求するのは、32ペア(64層)や48ペア(96層)などの超多層薄膜、あるいは、これらと同等の厚みに対して垂直にエッチングすることである。従来の異方性エッチングに比べ、技術的な難度ははるかに高い。エッチングが進行するに従って、入り口付近では時間経過とともに、ほんの少しずつ孔が広がっていくからだ。この広がりをどのくらい小さくできるかが、どのくらいのペア数のマルチペア薄膜に対して細長い均一な孔を作れるかどうかを左右する。
重要なのは、細長い孔は1本ではなく、1枚のウエハーに対して1兆本を超えるという、気の遠くなるような膨大な数だということだ。1兆本を超える細長い孔を均一に形成するというのは、極めて難しい技術である。しかもアスペクト比は20〜40という、これまでに経験したことがないような高さだ。
細長い孔の密度が特に高いメモリスルーホールの形成では、一段と高い均一性が要求される。国際学会やイベントなどではごくたまに、メモリスルーホールのエッチングに失敗した断面観察像が示されることがある。例えば、メモリスルーホールの形状が少しでも歪むと、応力が入ってスルーホール間のマルチペア薄膜が倒れる。あたかも、林立する高層ビルの1棟が斜めに倒壊して隣の高速ビルに寄りかかったかのような様相を呈することになる。もちろん、不良品である。
3D NANDフラッシュメモリのHARエッチングでは、エッチング装置メーカーの協力が欠かせない。3D NANDフラッシュ製造の高い要求仕様に対応できているのは、一部の大手メーカーだけだといわれている。
(次回へ続く)
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