RISC-V、中国で勢力を拡大:エコシステムも広がる(2/2 ページ)
今回開催されたイベントに参加した2社のベンダーが発表したレポートによると、中国では現在、RISC-Vの勢いが拡大しているという。
Armコアと同等レベルの性能ながら、低消費電力
Andesはこれまでに、RISC-Vベースの32ビットと64ビットの6種類のN25プロセッサをリリースしている。同プロセッサは、浮動小数点ユニットをサポートし、Linuxを実行する。同プロセッサのローエンド版は1GHzで動作し、消費電力は4.1μW/MHz。28nmプロセスを適用し、サイズは0.033mm2だという。
同社は現在、「Bumblebee」と「Aries」というコードネームの4つの新コアを設計しているという。Su氏は、「同コアは、性能を2倍に高め、サイズと消費電力を3分の2に低減した。さらに、DSPとベクトル処理を拡張し、RISC-V用のクアッドコアクラスタをサポートする計画だ」と述べている。
Andesは、DSP拡張の標準規格を策定するRISC-Vワーキンググループの議長を務めている。同社は、新しいRISC-V命令のRTLコードを定義および生成するためのASIC的な設計ツールもリリースした。
Gwennap氏は、「新しい32ビットAndes N25コアの1つは、Armの新コア『Cortex-M33』と比べて最大データ転送速度が速く、性能が7%高いが、サイズは小さい。Armに対抗するには、性能、消費電力、ダイ面積の全てを競わなければならない。Andes N25コアはRISC-Vの可能性を示している」と述べている。
ArmはプロセッサIP市場をほぼ独占していて、2017年のプロセッサ出荷数は213億個に上る。同市場におけるRISC-Vの現在のシェアはごくわずかだが、順調に拡大している。RISC-Vは組み込みや車載、IoTアプリケーションに適していて、サードパーティー製のソフトウェアによるサポートが十分でない場合にも対応できる。
米国の新興企業であるAbee SemiのRISC-V SoCは、中国の携帯電話機メーカーであるXiaomiと提携するHuamiのスマートウォッチとフィットネスバンド約2000万台に搭載されている。米国では、NVIDIAがRISC-Vを採用し、GPUに組み込まれた独自のマネジメントコアを置き換える予定だという。HDDメーカーであるWestern Digitalは、ストレージ製品にRISC-Vを採用し、2020年までに10億台以上の売り上げを達成する計画だという。
Gwennap氏は、「RISC-Vを支援するQualcommが同社のPMIC(パワーマネジメントIC)の組み込みコアにRISC-Vを採用すれば、年間8億個の『Snapdragon』に搭載されることになり、出荷台数が急増すると予想される」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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