ニュース
独自技術と相性のよい市場を探す、トレックスの戦略:「全ての領域は追わない」(2/2 ページ)
トレックス・セミコンダクターは「electronica 2018」(2018年11月13〜16日、ドイツ・ミュンヘン)で、コイル一体型のDC-DCコンバーターなど同社の特徴的な製品を展示した。
銅の電極端子を使った新しいパッケージング技術
Henson氏は、“トレックスらしい製品”として、コイル一体型のDC-DCコンバーターシリーズを挙げる。産業向けとしては、入力電圧が最大36Vの「XCL230/XCL231」がある。24Vセンサーで使用できるようにした製品だ。外形寸法は3×3mm。この製品で最も特徴的なのは、DC-DCコンバーターICとコイルを統合する方法だ。ICパッケージに「Copper CoolPost」と呼ぶ銅の電極端子を2つ設ける。銅電極端子はパッケージ上面に露出していて、そこにコイルを実装することで、ICパッケージとコイルを一体化する。これによって、コイルはCopper CoolPostを介して熱を効率よくPCB(プリント配線板)に拡散できるようになり、全体として熱特性が格段に向上するという。
![](https://image.itmedia.co.jp/ee/articles/1812/06/mm3017_181206torex2.jpg)
「Copper CoolPost」を使ったパッケージング技術。トレックスは、このパッケージを加藤電器製作所と共同で開発し、特許を取得している 出典:Torex Semiconductor Europe(クリックで拡大)
Copper CoolPostを用いたコイル一体型DC-DCコンバーターシリーズは、特にIoT(モノのインターネット)など小型センサーを使う用途に適していると、Henson氏は述べる。小型センサーでは発熱は非常に大きな課題だからだ。
Henson氏は、「われわれの戦略は、車載市場でも産業市場でも基本的に同じだ。全ての領域に注力しようとせず、小型、高効率、低消費電流をはじめとする、トレックスが持つ特徴的な技術と最も相性がよい市場セグメントを探して勝負しにいく、というのが基本的な戦略だ」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
IC上にコイルを実装できる新構造パッケージを出荷
トレックス・セミコンダクターは2018年8月1日、DC-DCコンバーターなどのICパッケージ上にコイルを実装できる新構造パッケージ「クールポストタイプパッケージ/DFN3030-10B」の出荷を開始したと発表した。今後、月間175万個の出荷を見込んでいるという。2018年半導体売上高1位はSamsungか、Intelとの差が開く
2018年の半導体売上高ランキングでは、Samsung ElectronicsがIntelとの差をさらに広げ、2017年に続き首位に立つ見込みだという。市場調査会社のIC Insightsが発表した。偽物じゃないの!? EOL品再生産の裏側
半導体メーカーが生産を打ち切ったEOL品を、再生産するメーカーが存在する。そうした再生産品は、信頼のおけるものなのだろうか? EOL品を再生産し、販売するRochester Electronicsの日本法人に聞いた。シリコンが次の手、村田製作所のキャパシター戦略
2016年10月に村田製作所が買収したフランスのIPDiAは、シリコンキャパシターを事業として手掛けるほぼ唯一のメーカーだ。積層セラミックコンデンサーに比べてかなり高価なシリコンキャパシターは、その用途は限られている。それにもかかわらず、なぜ村田製作所はIPDiAの買収に至ったのか。トレックス、シリコンバレーにR&Dセンターを開設
トレックス・セミコンダクターは2016年4月29日(米国時間)、米国法人のTOREX USAの一部門として米国カリフォルニア州サニーベールにR&Dセンターを開設し、その開所セレモニーを同州サンタクララのホテル「Hyatt Regency Santa Clara」で開催した。“後発・ローム”がパワーデバイスで成長できる理由
ロームはパワーMOSFETやIGBTなどのパワーデバイス分野で売り上げ規模を拡大させている。パワーデバイス市場では、後発のローム。なぜ、後発ながら、自動車や産業機器などの領域でビジネスを獲得できているのか。ローム役員に聞いた。