モグラのごとく穴を掘る、設計向けに的を絞るマウザー:量産には手を付けない(2/2 ページ)
半導体/電子部品のディストリビューターであるMouser Electronics(以下、Mouser)が順調に売上高を拡大している。2016年に10億米ドル、2017年には13億米ドルを達成し、2018年には19億米ドルを達成する見込みだ。
90万品番の品ぞろえ
このようにさまざまな取り組みを行っているMouserだが、同社でエグゼクティブアドバイザーを務める横伸二氏は、「Mouserの最大の強みは、量産ではなく開発設計の工程のみにフォーカスし、技術者が開発の段階で必要とする部品を徹底してそろえていること」だと述べる。
それを示す数値が、Mouserが常時そろえている品番の数である。Mouserは、90万品番以上の実在庫を保有している。横氏は、「われわれの調べでは、競合他社は25万〜50万品番だ。それに比べるとMouserは圧倒的に多いことが分かるだろう」と述べる。「開発者、設計者にとっては、モノを探す時間すらもったいない。われわれはメーカーが開発した新製品も取りそろえている。1個から発注でき、例えば夕方に自宅のPCから発注しても、次の日にはオフィスに届いている、といったことも場所によっては可能だ。開発工程おいては、そこで大きな差が出てくる」(同氏)
指定商社と競合しない
さらに勝田氏は、量産向けは手掛けない、Mouserならではのユニークな特長について述べた。「特に日本では、メーカーお抱えの指定商社がある場合が多い。実は、Mouserがそのような指定商社と協業できるということが分かってきた。通常、指定商社にはMOQ(Mimimum Order Quality)があるので、1個から販売するというのはなかなか難しい。Mouserならばそれができるので、指定商社がわれわれから部品を1個調達して、販売できるようになるのだ。大量受注が望ましい指定商社にとって、Mouserは競合ではないということに気付き始めてくれている」(勝田氏)
「本当においしいステーキやそばを食べたかったら、何でもそろっているレストランよりは、専門店に行くだろう。それと同じことをMouserは行っている。モグラは深く穴を掘るが、われわれも、技術者が望んでいる所を深く掘ることに専念している」(横氏)
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