ルネサス、仮想化を実現する車載制御マイコン:複数の役割を1チップで実現
ルネサス エレクトロニクスは、仮想化支援機構をハードウェアで実装した車載制御用クロスドメインマイコン「RH850/U2A」を開発した。
クロスドメインマイコンで制御ソフトを共通化
ルネサス エレクトロニクスは2019年2月、仮想化支援機構をハードウェアで実装した車載制御用クロスドメインマイコン「RH850/U2A」を開発したと発表した。自動車向け機能安全規格「ISO 26262」において、最も高い機能安全レベル「ASIL D」まで対応することが可能であり、シャシー制御やボディ制御などを行う複数のソフトウェアを1チップで処理することができる。
RH850/U2Aは、28nmプロセスで製造する。既存のシャシー制御用マイコン「RH850/Px」シリーズと、ボディ制御用マイコン「RH850/Fx」シリーズに搭載している機能を統合した後継マイコンと位置付ける。
RH850/U2Aには、動作周波数が400MHzのCPUを、最大4コア(ロックステップ対応)搭載する。各CPUコアにハードウェアの仮想化支援機構を実装しており、リアルタイム性と仮想化の両立を図った製品である。
また、流変動率を抑制した自己故障診断「SR-BIST(Standby Resume‐BIST)」機能を搭載した。これにより、ASIL Dを含めて機能安全レベルが異なる複数のソフトウェアを1個のマイコンで実行することが可能となった。各ソフトウェアは相互干渉をしないため、これまで独立させていた複数のECUを、1つに統合することができるという。
内蔵するメモリ容量は、フラッシュメモリが16Mバイト、SRAMが3.6Mバイトと大容量である。将来の機能拡張に加え、OTA(Over The Air)によるソフトウェアの更新などにも対応可能である。「EVITA-Full」に対応したセキュリティ機能も搭載し、サイバー攻撃から車載システムを保護することができる。
この他、最大16チャネルのCAN‐FDや、SGMII規格の1Gビット/秒のイーサネット通信インタフェースを搭載するなど、ネットワーク機能も強化している。
ルネサスは、2020年第1四半期(1〜3月)より順次、RH850/U2Aのサンプル出荷を始める。関連のソフトウェアや開発環境も整備していく。なお、ドイツで開催される組み込み機器の専門展示会「embedded world 2019」(2019年2月26〜28日)の自社ブースで、「RH850/Uシリーズ」のデモ展示を行う予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 組み込みAIをけん引する、ルネサスの意気込み
ルネサス エレクトロニクスは「electronica 2018」(2018年11月13〜16日、ドイツ・ミュンヘン)で、同社が提唱する、組み込み機器にAI(人工知能)を搭載する「e-AI」の訴求に力を入れた。 - 「e-AI」で破壊的なイノベーションを、ルネサス 横田氏
ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」に出展しているルネサス エレクトロニクスの展示内容は、車載製品ではなく、産業機器向けの製品が中心となっている。同社執行役員常務兼インダストリアルソリューション事業本部長を務める横田善和氏に、その狙いなどを聞いた。 - 環境発電で“欠けていたピース”埋める、ルネサスのSOTB
ルネサス エレクトロニクスはドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2018」(2018年11月13〜16日)で、エナジーハーベスト(環境発電)で得たエネルギーで駆動できる組み込みコントローラー「R7F0E」を発表した。核となるのはルネサス独自のプロセス技術「SOTB(Silicon On Thin Buried Oxide)」である。 - ルネサス、RXマイコン向け新型CPUコアを発表
ルネサス エレクトロニクスは、32ビットマイコンRXファミリーのCPUコアとして第3世代となる「RXv3」を発表した。 - ルネサス、MPUの画像処理性能を10倍も向上
ルネサス エレクトロニクスは、画像処理性能をこれまでより10倍も高めたマイクロプロセッサ(MPU)「RZ/A2M」を開発し、サンプル出荷を始めた。 - ルネサス、G3-PLC上にKNX通信プロトコルを実装
ルネサス エレクトロニクスは、電力線通信(PLC)の国際標準通信規格「G3-PLC」に対応したモデムソリューションに、ビル管理用途で採用が広がる通信プロトコル「KNX」を実装したPoC(Proof of Concept)を開発した。