産総研、大面積ダイヤモンドウエハー実現可能に:マイクロ波プラズマCVD法で
産業技術総合研究所(産総研)は、マイクロ波プラズマCVD法を用い、クラックがない体積1cm△△3△△級の単結晶ダイヤモンド作製に成功した。インチサイズのウエハー実現に大きく近づいた。
ガスを原料に体積1cm3級の単結晶ダイヤモンド作製
産業技術総合研究所(産総研)は2019年3月、マイクロ波プラズマCVD法を用い、クラックがない体積1cm3級の単結晶ダイヤモンドの作製に成功したと発表した。この製造方法はガスを原料としており、インチ級サイズの単結晶半導体ウエハー作製も可能とみている。
次世代パワー半導体の性能向上や省電力を可能にする新材料として、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)、Ga2O3(酸化ガリウム)、ダイヤモンドなどが注目されている。
特に、ダイヤモンドは耐圧や熱伝導率などに優れているため、実用化が期待されている材料の1つである。しかし、これまで製造に用いてきた高温高圧法だと、コストや技術の点で大面積ウエハーの作製は極めて困難だといわれてきた。厚膜にするため結晶成長を繰り返し行う必要があり、これがひずみや結晶性の劣化につながり、クラックを引き起こす要因となっていた。
産総研は今回、ガスを原料とするマイクロ波プラズマCVD法を用いて、ダイヤモンド合成に取り組んだ。「マイクロ波のパルス化や結晶保持構造の最適化による試料周辺の熱平衡性の向上」「試料位置の精密制御による長時間成長中のプラズマ/試料表面間距離の維持」そして、「原料ガスへの微量酸素添加による結晶ホルダーや試料周辺における異常成長の抑制」などを行った。これにより、一度の合成で厚み2〜5mmまで、クラックを発生させずに結晶を連続的に成長させることが可能となった。
開発した作製方法を用いると、結晶成長のための作業回数を減らし、厚膜化によるひずみや結晶性劣化を抑えることができるため、品質の高いダイヤモンド結晶をミリ単位で作製することが可能となる。試作したダイヤモンド結晶の品質を示すラマンスペクトルの半値幅(ピーク強度の半分の強度となる波数幅)と成長膜厚の依存性についても調べたところ、従来品に比べて開発品は高い品質であることが分かった。
産総研は今後、インチ級の大面積単結晶半導体ウエハー作製に取り組む。また、大面積のダイヤモンドウエハーを用いたパワーデバイス研究開発も継続して行う予定だ。
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