「SiCでシェア30%獲得を目指す」 STが開発を加速:サプライチェーンを着実に構築(2/2 ページ)
STMicroelectronicsは2019年3月、イタリアのカタニア(Catania)にある同社工場において、「当社は今後、戦略および売上高における重要な要素として、SiC(炭化ケイ素)に大きく賭けていく考えだ」との考えを明らかにした。
サプライチェーンとコストが課題
Chery氏は、この目標を達成するための課題は何だと考えているのだろうか。同氏は、「短期間で対処すべき重要な課題が少なくとも2つある。1つはサプライチェーンで、もう1つはコストだ」とEE Timesに語った。原材料サプライヤーとデバイスサプライヤーは、量の観点からサプライチェーンを調整する必要があるという。Chery氏は、「電気自動車(EV)には、電力効率に優れていることを実証するような推進策が必要だ。SiCは、この課題を解決する鍵になるだろう。そして、EVの電力効率を上げる唯一の方法は、SiC-MOSFETを採用することだ」と述べている。
2つ目の課題は、SiC-MOSFETの採用を増やすべく、デバイスのコスト(価格)を低減することだ。Chery氏は「そのためには、デバイスの小型化、ウエハーの大口径化、材料コストの削減、モジュール設計の最適化が必要だ」と説明する。
カタニア工場では、ベアダイとパッケージモジュールの両方を製造している。Monti氏はSiC-MOSFETのロードマップについて説明したが、それによると、同社は2020年に製品化を予定している第3世代のプレーナ型SiC-MOSFETと並行してトレンチ型SiC-MOSFETを開発しているようだ。
SiCはシリコン(Si)よりも製造上の課題が多い。これは、コストが膨らむ要因の一つであり、ひいては幅広い採用への課題になっている。SiCの特性上、品質や信頼性を確保するための製造フローがより複雑になる。また、SiCは非常に硬いので、拡散技術などでより高度な製造プロセスが必要になる。
こうしたことから、SiCデバイスはSiデバイスよりも高価だが、STMicroelectronicsは「SiCデバイスを採用すれば、最終的にコストを削減できる」と主張する。例えばEVでは、初期費用が300米ドル高くなるかもしれないが、バッテリーコストや設置面積、冷却コストを抑えられるため、最終的に2000米ドルのコスト削減になるという。
カタニア工場は、SiCだけでなく、幅広いパワー半導体も製造している。スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress(MWC)2019」(2019年2月25〜28日)で発表されたように、STMicroelectronicsのポートフォリオには、5G向けにMACOM Technology Solutions Holdingsと共同開発するGaN-on-Siなど、GaN(窒化ガリウム)も含まれる。
STMicroelectronicsは1996年にSiCデバイスの開発に着手し、2004年に最初のSiCダイオードを、2009年に最初のSiC-MOSFETを製造した。耐圧は1200Vと650Vがある。STMicroelectronicsと他の数社は現在、EVの成功の鍵となる車載用SiCパワーデバイスを製造中である。STMicroelectronicsは、2017年に6インチSiCウエハーの生産を開始し、太陽光インバーターや産業用モータードライブ、家電製品、電源アダプターなど、SiCを適用した製品向けに生産を強化している。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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