“垂直給電”で高効率を実現、AIプロセッサ向けに:Vicorが開発(2/2 ページ)
Vicorのコーポレートバイスプレジデント兼プロダクトマーケティング&テクニカルリソースを務めるRobert Gendron氏は、2019年5月17日にVicorの日本支社であるVicor KKで開催した記者説明会で、同社の成長戦略と最新技術について語った。
10種類の出力電圧に調整できる
Vicorは、2019年から車載市場参入に本腰を入れている。自動車向け電源コンポーネントの第1弾となるのが、10種類の電圧を出力できるDC-DCコンバーター「PowerStrip」だ。センサーやカメラ、LiDAR(レーザーレーダー)、機械学習用プロセッサなど、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転に必要なコンポーネントに給電するもの。
PowerStripの入力電圧範囲は200〜400V。10個の出力があり、それぞれ10〜52Vの範囲で調整できる。出力電力は最大3.6kWである。Vicorのコーポレートバイスプレジデント兼プロダクトマーケティング&テクニカルリソースを務めるRobert Gendron氏によれば、PowerStripは2019年7月に公式発表される予定で、量産開始に向けて準備中だ。同氏によると、現在、1社の自動車メーカーがPowerStripの採用に向けて検討中だという。車載部品の規格についても、各自動車メーカーの品質規格に準拠するよう対応を進めている。
12V/48V双方向変換アプリケーション向けには、非絶縁DC-DCコンバーター「NBM」や絶縁型DC-DCコンバーター「DCM」、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)の降圧型DC-DC-コンバーターなどを提供している。いずれも小型で高効率を特長とした製品で、これらを組み合わせることで12V/48V双方向変換システムを構築できる。
2018年10月には、Appleの「iPad」サイズで10kWを給電できる、48V出力のAC-DCコンバーター「Power Tablet」を発表した。3相AC入力で、入力電圧範囲は200〜480V。平らな形状なので、液冷コールドプレートや液浸冷却など高度な冷却技術に対応でき、効率のよい放熱設計が可能だとGendron氏は語る。
米国以外の製造拠点も
Gendron氏は、「2018年に製造設備を増強し、製造キャパシティーを2017年比で6倍に増加させた。さらに、アンドーバーにある工場の拡張も進めている。拡張は2020年第2四半期に完了する予定で、同年第3四半期から拡張したエリアでも生産を開始する予定だ」と説明した。同氏によれば、Vicorはアンドーバー以外でも製造拠点を探しているという。「場所は決まっていないが、アジアとなる見込みだ」(同氏)
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