半導体実装、30℃フリップチップ実装を目指す:コネクテックジャパン(3/3 ページ)
コネクテックジャパンは、5月28日、本社(新潟県妙高市)で、報道関係者向けに事業戦略などの説明会を行った。同社社長の平田勝則氏は、独自の技術によって既に80℃までの低温フリップチップ実装を実現していることを紹介。現在は30℃での実装技術を開発中といい、「あらゆるものでIoT(モノのインターネット)を実現するには、低温、低荷重という切り口が絶対に必要だ」と話した。
30℃実装の実現を目指す
同社は、MONSTER PACのさらなる低温化の開発を進めており、既に80℃までの低温かつ20分の1の圧力での実装を実現した。これによって、各種MEMSセンサーの低応力実装のほか、PET、PEN、ポリウレタンなどの基板への実装、電池内蔵モジュールのPETなどの素材への実装も可能となった。受託開発も始まっているといい、実際の事例が紹介された。

右=120℃で耐熱140℃の磁気センサーチップを600個同時に実装しモジュール化。さらに、裏面にはドライバーICをそのまま実装し、省面積を実現した。/左=PETフィルムに80℃実装したもの(右)。既存の方法の場合は大きく変形してしまう(左)(クリックで拡大)
80℃実装によって、電池や無線、温度センサーを一体化させた小型モジュール。体積比50%を実現している。既存の接合温度では、電池の内蔵は不可能だったという/小型のAOC(Active Optical Cable)も実現。VICSELやPDチップを光導波路内蔵FPCに直接実装している。既存の方法では、熱による基板膨張収縮などによってずれが生じたため光軸を合わせる補正が必要だったというが、80℃の低温実装により高精度を実現している。(クリックで拡大)さらに、同社は現在、30℃での実装技術も開発中だという。実現すれば、耐熱40℃程度のバイオチップやストレッチャブルポリウレタンといった素材に、直接センサーや無線通信チップを実装することも可能になるといい、平田氏は、「例えば体内実装など、さらに幅広い用途での活用が実現する」と話した。

30℃実装による未来予想図。耐熱40℃のバイオチップ上にセンサーなどを集積できる/右=30℃実装が実現した場合の例として紹介された、電池内蔵センサーモジュールを取り付けた絆創膏。「実現すれば、絆創膏を張るだけで、センシングができるようになる」と説明した。(クリックで拡大)出典:コネクテックジャパン
左=MEMS振動子やMEMSフィルターは、既存の方法だと、熱応力によって特性変動を起こすが30℃実装が実現すれば、特性変動なしの製品が生み出せる/右=さらに、30℃の実装が実現すれば、リユースやディスポ、ウェアラブルの各種センサーも実現可能だという(クリックで拡大)出典:コネクテックジャパン10μmピッチ配線も実現
また、同社は、配線の狭ピッチ化も進めている。基板の熱膨張などの関係で、既存の方法では40μmが限界だったというが、MONSTER PACによって、27.5μmピッチ配線の製品を実現。さらに現在、自社開発では10μmピッチ配線も成功しているといい、その実例を紹介。これによって、パッケージ面積の大幅な縮小や低コスト化が可能になるという。

左=既存の方法とMONSTER PACでの10μmピッチ配線の構造比較/右=10μピッチ配線は、凸形のマスターモールド(左)製造後、凹形のレプリカモールド(中央)を作り、基板に配線とバンプを一括で印刷する(右)(クリックで拡大)出典:コネクテックジャパン
左=10μmピッチ配線基板によって、従来の方法では使用するTSVシリコンインターポーザーが不要になり、低コスト化を実現するという/右=開発中の10μmピッチ配線応用HBMモジュールサンプル(クリックで拡大)出典:コネクテックジャパン同社は、2020年以降の上場を目指している。また、「コンビニエンスストアくらいの面積で生産ができる」という小規模な特長を生かし、将来的には、フランチャイズ展開も検討しているという。
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