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組み込みAIを加速する、ルネサスの新Processing-in-Memory低電力で高速な推論を実現する(4/4 ページ)

ルネサス エレクトロニクスは、メモリ回路内でメモリデータの読み出し中に積和演算を行う既存のProcessing-in-Memory(PIM)を改良した、新たなPIM技術を開発したと発表した。同技術をベースに開発したAIアクセラレーターをテストチップに実装して推論処理を行ったところ、8.8TOPS/Wの電力効率を実証したという。

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試作チップでも推論精度が落ちず

 ルネサスは、開発した新しいPIMをベースにAIアクセラレーターを開発し、それを実装したテストチップを作成した。PIMの他、制御するためのロジックブロック、入出力情報を保持するためのSRAMブロックで構成されるクラスタが、4基搭載されている。クラスタは、CPUのコアに相当するもので、今回のように4基搭載している場合、4種類のAI処理を同時に行えるという。


新しいPIMを実装したテストチップの概要。今回のテストチップにはクラスタが4基搭載されていて、チップサイズは3×3mm。12nmプロセスで製造されている 出典:ルネサス(クリックで拡大)

テストチップで、幾つかのCNNを動作させた結果。図の右側にある表に示している通り、これまでの論文では、手書き文字の認識率について、テストチップでの認識率(Meas.)はシミュレーションでの認識率(Sim.)に比べて数パーセント下がる場合が多かった。ルネサスのテストチップは、シミュレーションでの認識率(98.91)と実機での認識率(99.0)がほぼ一致している 出典:ルネサス(クリックで拡大)

 野瀬氏は「従来のPIM関連の技術発表は、原理実証するだけのものが多く、画像認識のニューラルネットワークをチップ内で完結できる機能を搭載しているようなものはなかった。われわれが今回試作したチップは、チップ内部でシステムレベルの動作が可能になっている」と述べた。

左=ルネサスが行った、手書き文字認識のデモ。左の手前にあるのがテストチップを搭載した基板で、コイン電池で駆動する。手書き文字をカメラで撮影し、テストチップで推論させる/中央=ディスプレイの赤枠内の手書き文字を認識し、推論している。推論結果はディスプレイの左上に表示されている。左端に見えているオレンジの横棒は0〜9に相当する10本があり、棒の長さが長いほど、推論結果の“自信度”が高い。この写真では「0」と「6」に相当する横棒が長く伸びており、ニューラルネットワークが「0」か「6」だと推論していることが分かる/右=基板の右寄りにある一番大きなチップが試作チップ(クリックで拡大)
人の体を認識するデモ。「体」と判断した部分が赤く表示されている。写真はルネサスの野瀬浩一氏(クリックで拡大)

「e-AI」の処理性能を10倍にする要素技術

 ルネサスは、e-AIの処理性能を1年半ごとに10倍にするというロードマップを持っているが、今回の新しいPIMは、10TOPS/Wクラスの性能を実現するための要素技術の一つになると位置付けている。


「e-AI」のロードマップ。ルネサスは、10TOPS/Wクラスの処理性能を実現するe-AIを「Class-4」と定義していて、今回の新しいPIMは、そのClass-4のe-AIを実現する要素技術として位置付けられている 出典:ルネサス(クリックで拡大)
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