次々世代の不揮発性メモリ技術「カーボンナノチューブメモリ(NRAM)」:福田昭のストレージ通信(153) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(14)(2/2 ページ)
次世代メモリの有力候補入りを目指す、カーボンナノチューブメモリ(NRAM:Nanotube RAM)について解説する。NRAMの記憶原理と、NRAMの基本技術を所有するNanteroの開発動向を紹介しよう。
開発企業Nanteroは共同開発や技術ライセンスなどでビジネスを展開
Nanteroは自社で不揮発性メモリ製品を開発しない。ビジネスの基本的な考え方は共同開発や技術ライセンスなどである(参考記事:「NRAMの早期実用化を目指す、Nanteroが資金集めを加速」)。最近の開発動向を以下に示そう。
中央大学は2014年6月にNanteroと共同で、140nm世代の製造技術によるNRAM記憶素子を試作し、20nsと短い電圧パルスによってデータを書き換えられることや、1000億回の書き換え寿命があることなどを確認した(参考記事:「カーボンナノチューブを使った「NRAM」の基本動作を実証」。
富士通セミコンダクターと三重富士通セミコンダクターは2016年8月に、NanteroとNRAM技術による半導体製品の共同開発で合意したと発表した(参考記事:「富士通セミ、CNT応用メモリ「NRAM」を商品化へ」)。55nm世代の製造技術によってNRAM混載カスタムLSIや単体NRAMなどを共同開発する。発表当時のニュースリリースでは製品化予定を2018年末としていたが、2019年6月中旬の時点では、製品はリリースされていないようだ。
またNanteroは2018年8月に半導体に関する複数のイベントで、「大容量NRAMによって主記憶のDRAMを置き換える」アイデアを発表した。28nm世代の製造技術によって4GビットのNRAMシリコンダイを始めに開発する。メモリセルは1個のトランジスタと1個のCNT記憶素子で構成する。
続いて製造技術を14nm世代に微細化したNRAMを開発する。シリコンダイ当たりの記憶容量は4倍の16Gビットになるとする。これは現在のDRAMシリコンダイの最大容量に匹敵する。製造技術を7nm世代とさらに微細化すると、シリコンダイ当たりで64Gビットの大容量不揮発性メモリを実現できるとNanteroは主張する。
さらに、3次元クロスポイント構造を採用して記憶容量を拡大するNRAMのアイデアについてもNanteroは発表している。ただし、クロスポイント構造で必須とされる、セレクタの技術についてはふれていない。
(次回に続く)
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