5GでのHuawei機器採用、苦悩する英国:地政学的な慎重さが必要(2/2 ページ)
英国の2つの政府委員会が2019年7月、同国の5G(第5世代移動通信)ネットワークにおけるHuawei製品の採用をめぐり、その見解を明らかにした。
「仮想化RAN」の概念も重要に
また同氏は、「コアエッジコンポーネントへの移行に関する側面の一つとして、議論が進むにつれ、コアコンポーネントの他に、仮想化RAN(Radio Access Network)も登場するという点が挙げられる。これはつまり、コアとRANを簡単に区別することができなくなり、もはや物理ボックスではなくなるということだ。市販の汎用ハードウェアの最上部に配置され、オープンソースソフトウェアとともに、あらゆる種類のネットワーク機能で使用されるリソースを提供することにより、5Gネットワークを構成する」と述べる。
一方でVodafone UKのCTO(最高技術責任者)を務めるScott Petty氏は、「クラウドベースのインフラのコアネットワークは、さらに分散化できるとする見解は、物理的には正しいといえるだろう。ネットワークの論理的構成は変わらない。無線基地局と全てのコアネットワークエレメントとの間には、IPsecなどのセキュリティゲートウェイを介したモバイルエッジコンピューティングなどのように、境界線があり、ゲートウェイは、コアネットワークとエッジネットワークの間のセキュリティの分離を維持している。これは、5Gでも変わることがなく、当社の設計でも決して変更されることはない。IPsecを取り除くことは技術的には可能だが、決して外すべきでない重要なセキュリティレイヤーを取り除いてしまうことになる」と述べている。
コア対エッジに関する議論のポイントは、5Gの導入により、企業や国にとって、機密情報にいかに容易にアクセスできるようになるのかという点を、理解することにある。
Huaweiのグローバルサイバーセキュリティ/プライバシー部門の責任者を務めるJohn Suffolk氏は、倫理的問題や、天安門事件、人権に関する同社と同氏個人の見解などの他、特に、中国政府がネットワークへのアクセス提供を指示することが可能なのかどうかといった点について、かなり攻撃的な厳しい質問を受けた。
Suffolk氏や、証言を行った他の人たちは、基本的に、ネットワークデータへのアクセスを管理しているのは、機器メーカーではなくネットワーク事業者である、という点を明確に示した。Huaweiは、「当社は厳重な監視下にあるため、もし悪意ある行動に携わるようなことがあれば、見過ごされるはずがない。他の通信事業者たちも述べているように、他のメーカーに仕事を回されてしまうことになるだろう」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「モバイルネットワークの民主化を目指す」楽天 三木谷氏
楽天のイベント「Rakuten OPTIMISM 2019」が2019年7月31日、パシフィコ横浜で開幕した。初日のキーノートには会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、5G(第5世代移動通信)を含め、同社のモバイルネットワークに対する取り組みなどを語った。 - 5GはHuawei抜きで何とかするしかない 座談会【前編】
終息の糸口が見えない米中貿易戦争。IHSマークイットジャパンのアナリスト5人が、米中貿易戦争がエレクトロニクス/半導体業界にもたらす影響について緊急座談会を行った。座談会前編では、5G(第5世代移動通信)とCMOSイメージセンサーを取り上げる。 - AppleがIntelのスマホ向けモデム事業を買収へ
Appleは2019年7月25日(米国時間)、Intelのスマートフォンモデム事業を買収することで合意したと発表した。買収金額は約10億米ドルとされている。 - “余計なもの”って何? 「Mate 20 Pro」の疑惑を晴らす
Huaweiの2018年におけるフラグシップ機「Mate 20 Pro」。この機種には、“余計なもの”が搭載されているとのうわさもある。本当にそうなのだろうか。いつものように分解し、徹底的に検証してみた。 - 「世界最小」SAWデバイスを製品化、村田製作所
村田製作所は2019年7月16日、従来製品に比べサイズを24〜37%小型化したSAW(Surface Acoustic Wave/表面弾性波)デバイスを製品化し、量産を開始したと発表した。同社では、SAWデバイスとして「世界最小サイズを実現すると同時に、従来品と同等以上の特性を持つ」としている。