“IntelのCEO”という天職を見いだしたBob Swan氏:19年1月に暫定から正式CEOに就任(2/2 ページ)
2019年1月に、Intelの暫定CEOから正式なCEOに就任したBob Swan氏。その背景にはどんな心境の変化があったのか。米国EE Timesがインタビューを行った。
重要なのは、「自分の周りにどんな人がいてくれるか」
またSwan氏は、「私と同僚たちは6〜7カ月の間に、互いに結束して、強い絆(きずな)が生まれた」と述べる。
同氏は、「他のさまざまな企業のCEOたちと同様に、会社を運営するということは、力を合わせて努力することだと信じている。トップ記事の内容については、ほとんど役員室のリーダーが独占するが、最終的に重大な決断を一人の人間が下すということは、あるとしてもまれだ。CEOの職に就く者は、いくつかの局面に対する態勢を整えることができても、その他のことに対しては準備ができていない場合がある。重要なのは、自分のスキルを補ってくれる人々が周囲にいてくれて、例えば1+1+1の答えが3を大きく上回るような成果を実現することができるかどうかという点だ。私は、何よりもまず素晴らしい人々に恵まれている上、皆がチームスポーツとしての取り組みを見せてくれている。私が共通のテーマとして掲げている知的好奇心に対して、皆が非常に優れた補完的スキルを持っている」と述べる。
同氏は、2016年にIntelに入社する以前に、General Electric(GE)において15年間にわたり、複数の財務職を歴任したという。その後、数々の技術メーカーでCFOに就任している。具体的なメーカー名としては、Electronic Data SystemsやTRW、Webvan(短期間ながらCEOにも就任)、Northrop Grumman、HP Enterprise Services、eBayなどが挙げられる。中でもeBayでは、9年間にわたってCFOを務めたという。
Swan氏は2015年に、ある成長企業の経営パートナーになった。同氏は、その職務を無期限で続けることもできたというが、2016年に、再びCFOの職務に戻ることを決める。それは、同氏が就任を検討したいと思えたほんの一握りの企業の中の1社である、Intelだったからだ。
皮肉なことに、Swan氏にCFO就任を説得したのは、Krzanich氏だった。Swan氏は、Krzanich氏との初対面となるディナーの席についてから約10分たった時点で、自分にはApplied Materialsの取締役会での経験はあるが、半導体業界の専門家ではないという点や、どう考えてもIntelのこと熟知しているわけではないという点について、Krzanich氏に確認しなければならないと感じたという。
そして、Krzanich氏は「完璧な答えを持っていた」とSwan氏は続けた。「Brianはこう言った。『私たちに必要なのは、Intelや半導体業界についてよく知っている人ではないのです。さまざまな経験からわれわれの知識を補完し、別の見方ができる人たちなのです』」(Swan氏)
Intelは数年前から、主にPC向けにプロセッサを提供するサプライヤーから、IoT(モノのインターネット)や自動車、データセンターなど、より広範な分野をターゲットとした“データ中心”のカンパニーへと変ぼうを遂げてきた。これによって、競い合う相手は増えたが、逆に言えばIntelは、PCよりもはるかに大きな市場へと参入できるチャンスを得ることにもなっている。
“データ中心”カンパニーへの移行は、失敗した分野もあるが、成功している分野も多い。2000年代当初、Intelの売上高はPC向けプロセッサが70%を占めていたが、現在は「PC中心」事業と「データ中心」事業の売上高がちょうど5割ずつになっているという。
Swan氏は、技術的なバックグラウンドがないことを心配していない。「Intelには約7万人のエンジニアがいる。私自身が最高のエンジニアである必要はない。世界最高のエンジニアたちが既に当社にいるからだ」(同氏)
Swan氏は、「私の挑戦は、周りにいる優秀なエンジニアから学ぶことだ。別のフィルターを通した疑問は、新しい何かを生み出すこともある。素朴さは、偉大さを追求する上で役に立つ」と続けた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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